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泥水のみのみ浮き沈み [読書]

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今日は朝から体調が悪く、休もうかと思ったのですが、別の部署との打合せがあったので気力を振り絞って出社。
しかし、この前から調子の悪いシステムが再び愚図り始め、その対応に追われる。
御陰で、別部署との打合せは完全に吹っ飛びました。

しかも上つ方から、何でこんな問題が出て来たのだ?とか、数年も何でこの問題を放って置いたのだ?等と言う叱責メールが飛んでくるわけで。
正直、毎年こちとらシステムの更改を上申しているのに、その度にあの費用がかかるから止めろとか、こっちにお金が要るからこれは見送れとか言われて涙を呑んできたわけで。
インフラなんてのは動いて当たり前、システムなんてのは空気みたいなものみたいな考え方でお歴々がいるから、必要な投資が為されないのですよ。
それを今更何を言う、ですよ、と。

こんな事なら家で寝ていた方が良かったです。
おまけに、その余波で、その打合せの後はさっさと帰る予定だったのに、結局、ズルズルといる羽目になり、おまけに来週月曜は休んで医者に行こうと思ったのに、休暇が取消されてしまい、医者には土曜日に行く羽目になって、とうとう今月は成田にも行けず仕舞いです。

夏休みと言い、休暇と言い、「働き方改革?何それ?美味しいの?」ですよ、ちくしょー。

そんなやさぐれた気持ちでここ最近読んでいたのは、『泥水のみのみ浮き沈み 勝新太郎対談集』(文藝春秋編)です。

元は、30年近く前の月刊文藝春秋で連載していた記事の文庫化で、当時の勝新太郎は、パンツの中に大麻を隠し持っていたとして、逮捕、そして起訴されて干されていた頃。
そして、兄の若山富三郎が亡くなり、プロダクションも倒産して、と泣きっ面に蜂の状態の頃に糊口を凌ぐためにやった対談です。

幾ら糊口を凌ぐためにやった対談とは言え、そこは勝新、そんじょそこらの人が対談の相手になる訳も無く。
相手も一癖も二癖もある人達。

最初は映画評論家の白井佳夫さん。
丁度、裁判で執行猶予を食らった直後だっただけに、話もそれ中心に推移します。
謂わば、映画俳優である勝新の不倶戴天の敵の一人ですが、それは愛情の裏返しでもあります。
白井さんは、勝さんをリスペクトしつつも、言うべき所は媚びずにちゃんと諭していたり。
それを気にしないのも勝新らしいですが。

第2回目は一番の若手であるビートたけしさん。
彼はフライデー襲撃事件で前科者になったので、前科者同士としての組合せ。
今は毒舌キャラで伸していますが、勝新の前だと借りてきた猫だったりするのが面白い。
丁度、北野武として映画を作り始めた頃だったから、話が監督論になったり…。
そんな人が、勝新と同じ『座頭市』を作って主演するのだから、世の中は判りませんねぇ。

第3回目は三國連太郎さん。
ほぼ同世代だと思いますが、勝新が動で天才型で破天荒型のキャラクターだとしたら、三國連太郎さんは静で努力型で真面目と言う真逆なキャラクター。
豪快な勝新の口調に対して、常に折目正しく反応する人だなぁ、と。
でも、実際の話の中身はと言うと意外にも勝新と大して変わらないし、そのギャップが面白かった。
それに、当時は聞くのも憚られたであろう、息子の佐藤浩市さんとの関係についても、勝新だからズバズバ聞いていたりするのは流石だなぁ、と思ってみたりする。

第4回目は瀬戸内寂聴さん。
この人もある意味勝新と良い勝負の破天荒な人ですから、勝新と気が合ったのでしょうかね。
だから話もぶっ飛んだ勝新の話によく対応しているところは流石だな、と思ったり。
それに、奥さんの中村玉緒さんとの関係も良好なので、逸話が色々と飛び出すし、引出しが多い人だなぁと。

第5回目は石原慎太郎さん。
まぁ、この人よりは弟の石原裕次郎と勝新がよくつるんでいたからと言うのもあるでしょうが、石原さんはかなり真面目なので、ちょっとこの対談は物足りなかった感じがする。

第6回目は真打ちである森繁久彌さん。
この人も見かけによらず破天荒型の天才ですから、勝新とは波長が合った様で、話が色々と弾んでいました。
特に下ネタに掛けてはこの人の右に出るものはいないでしょうから、常に勝新とは下ネタ話に花を咲かせていますが、勝新がちょっと中座した時に、涙を流して机を叩き、「こんな才能を埋れさすとは何事だ!」と言う一面も見せたりするのが、勝新は色んな人に愛されているのだなぁと。
また、人生観、役者としての心構えにまで話が及ぶのは、やはり勝新の引出しの多さなんだろうなぁ。

第7回目は津本陽さん。
これは、勝新が拘置所に入っている時に『下天は夢か』を読んで感銘を受けたからだそうで。
この本を読んで、信長に対する考えを書いた作家以上に透察しているのは流石に勝新。
で、それを映画にしたいという夢を語るのもまた勝新らしい。

最終回は何と奥さんである中村玉緒さん。
流石に両者とも非常にぎこちない対談ではあるのだけれど、そのシャイさがまた勝新らしいと思ったりする。
勝新が豪放磊落でいられるのも、この奥さんがいてこそだし、この奥さんの掌の上で、勝新は踊らされていたのかも知れません。
そう言う意味で中村玉緒という人は非常に器の大きな人じゃないかなぁ、と思いますね。

実はこの本、対談中の写真とかは一切無く、扉に対談相手のイラストが描かれているだけなのですが、挿絵や写真が無くても、時々、中にト書きみたいなのもあったりして、その場面場面の光景が思い浮かぶ本でした。

泥水のみのみ浮き沈み 勝新太郎対談集 (文春文庫)
文藝春秋
2017-06-08

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