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秀長さん [読書]

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今日は雨で寒いし在宅勤務をチョイス。
そして、土曜日と日曜日の後始末で会議会議の日々でメシを食べる暇もありませんでした。
在宅勤務の時くらい、昼はちゃんと休みたいのですけどねぇ。

さて、ここ数日読んでいた本の紹介。

『秀長さん』(鞍馬良著/文芸社文庫刊)。
文字通り、豊臣秀長に焦点を当てた小説です。
豊臣秀長に焦点を当てた小説と言えば、最も有名なのが堺屋太一さんの『豊臣秀長』なのですが、この本はそれに触発された作品らしい。

何となく、堺屋さんの本と似たエピソードが多いのは、元の資料が同じものだからなのかな。
堺屋本と違うのは、周りの人達の人物描写でしょうか。
特に、蜂須賀小六の描き方が堺屋本と異なって、こちらの方がより人間味の溢れる小六像になっている様な気がする。

この本でも、基本的に尾張の百姓だった小一郎が、藤吉郎の願いに根負けして、清洲に出て来る所から始まります。
その後、兄の藤吉郎が出世を遂げるごとに、この人も少しずつ地位が上がっていきます。

勿論、影で結構な努力をした甲斐があって、自らの実力で地位を向上させた部分もありました。
そして、但馬の国持大名に出世し、紀伊国を統べ、遂には大和国を合わせて100万石の大大名となっていく訳です。

しかし、その姿勢はあくまで謙虚で、兄を立てて自分は影となり、また分身となって秀吉に尽すと言う人生であって、兄より先に出ようと言うものではありませんでした。
歴史に「もし」はありませんが、秀長にちゃんとした跡継ぎが生まれていて、秀吉よりも遅くに死んだら、関ヶ原は無かったかも知れませんし、徳川幕府は何れ成立したかも知れませんが、その成立は少しは遅くなったかも知れません。

そう言う意味では、豊臣政権にとって何より大事な補佐役、兄のブレーキ役だったと思います。
ただ、残念なのがどうしても堺屋本と比べてしまうのですよね。
やっぱり堺屋太一さんは、円熟味のある筆で秀長という人物をしっかり造形しているので、どうしてもこの本での秀長像は薄っぺらい物に見えてしまいます。

もう少し、蜂須賀小六や竹中半兵衛との絡みなどを深掘りすれば、違った味わいのある作品になったのでは無いかと思ったりもする。
後、男の物語で、女性が絡む部分が結構少なかった。
豊臣家も、女性が仕切る部分もあったと思うのですが、この辺の描写が少し浅いような感じがしました。

また、徳川家との合戦の部分も、もう少し厚みが合った方が良かったかなと。
特に和睦のために母を人質にするエピソードがバッサリ切られているのですが、この部分、弟として兄に付き従っていたのか、それとも何らかの抵抗を見せたのか、その辺ももう少し描写があっても良かった様に思えます。

まぁ、紙幅の問題もあったのだと思いますが、題材と流れは良かっただけに、ちょっと惜しまれますね。
冗談抜きで、久々に戦国物の作品を読んで、信長の野望をやりたくなりました。
そう言えば、7月に新作が出るらしいですね。

【文庫】 秀長さん (文芸社文庫)

【文庫】 秀長さん (文芸社文庫)

  • 作者: 鞍馬 良
  • 出版社/メーカー: 文芸社
  • 発売日: 2014/12/04
  • メディア: 文庫


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