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第四極 [日記]

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来週はお盆休みなので、今週は駆け込み作業。
御陰でレビュー目白押しで、尚且つ品質の悪いレビュー資料ばかり作ってしまうので、正直の所呆れられています。
嗚呼、ちゃんとした技術を取得できる余裕が欲しい。

さて、オランダの巡洋艦の話をする前に、久々に南米大陸の海軍の話を少し。
南米大陸で大国と言えば、アルゼンチン、ブラジル、チリが3大国の位置を占めています。
これは今でも変わりません。
で、残りは有象無象かと言えば、忘れてならないのが第4極の存在です。
日本では、フジモリ大統領が就任していた国と言えば有名だと思いますが、ペルーがそれに当たります。

ABCの各国が欧米寄りの軍備を整えているのですが、何故かこの国はそうした国が見向きもしない国から軍備を整えています。
半世紀前にはセンデロ・ルミノソと言うキューバ革命に影響を受けた人々が反政府活動を行っていました。
キューバと言えば共産主義諸国の一員ですが、ペルーの主力戦車はソ連製のT54/55、装甲車はBTRなどとソ連製兵器が目白押し。
空軍の軍備も、ソ連の他にはポーランドにまず最初に配備されたものの、友好的な発展途上国にすら輸出されていないSukhoi Su-22なんて言うのがいち早く輸出されていましたし、今でもヘリコプターはMil Mi-8/17系列が使われています。

そんなペルーですが、海軍は当初そんなに戦力を保持していませんでした。
しかし、隣国ボリビアとの本物の「太平洋戦争」に勝利し、ボリビアの海岸線を奪ったことで、海軍に脚光が浴びます。
とは言え、巡洋艦を発注したもののその数2隻、しかし1隻は1895年に日本に売却してしまいます。
余談ながら、日本は結局この巡洋艦を配備せず、米国がこれを引き取って砲艦として就役させていたりします。

ただ、隣国で大国のチリが前に書いた様に海軍の軍拡に力を入れ始めると、そうも言っていられません。
「太平洋戦争」でボリビアから得た領土をチリに奪われる危険があったからです。
そこで、なけなしの予算を叩いて、1906年から1907年に掛けてAlmirante Grau級の偵察巡洋艦を英国に発注します。

それに加え、1908年~14年にかけて、英国に対抗すべくフランス海軍の軍事顧問団が来た時に、1890年建造の装甲巡洋艦Dupuy de Lomeを購入したのですが、支払の段になってトラブルが発生し、また、戦力バランスが崩れることを嫌ったチリの横槍で引き渡されず仕舞い。
そうこうしている内に第1次世界大戦が勃発してしまい、旧式艦と言えども喉から手が出るほど欲しかったフランス海軍が、この艦を接収します。
ただ、実際にはペルーに引き渡されず放置されていたものだったので状態が悪く、余り使われる事は有りませんでした。
結局は、ベルギーに売却され、同国で商船に改造されたそうです。

Almirante Grau級の偵察巡洋艦は改装を重ね、その後50年間、ペルーの旗艦として君臨します。
射撃指揮装置はイタリア製のものに換装し、対空砲は何と日本製の8cm高角砲に換装していたりします。

この時期はチリとの緊張関係が緩和し、一方でコロンビアやブラジルとアマゾンを巡る国境紛争が勃発したので、Loreta級河川砲艦が1930年代に整備され、唯一の駆逐艦Rodriguezや米国製のR級潜水艦が川を遡って、紛争地に送り込まれています。
なお、R級は1926年に6隻が発注されたのですが、大恐慌の御陰で2隻キャンセルになりました。

この他、エストニア海軍の2隻の旧ロシア海軍駆逐艦が2隻、アマゾン危機に際して1933年に購入したのですが、現地までの輸送手段が無く、これまた放置された結果、進駐してきたソ連海軍に接収されています。

戦前のペルー海軍は第四極どころか、箸にも棒にもかからない海軍だったわけです。
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