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ワインと戦争 ナチのワイン略奪作戦 [読書]

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昨日から夏本番という状態なのに、リビングのクーラーが冷えなくなってきました。
どうやら、冷媒ガスの補充をしなければならないかもです。
既に此の家に引っ越してから購入して早20年以上経過しているので、部品も無いでしょうし、そろそろ買い換えかも知れません。
それにしても、稼働率の良い寝室のクーラーはまだまだよく冷えるのに、夏しか動かさないリビングのクーラーがおかしくなるのは何故なんでしょうか。
やっぱり、稼働率の問題なのか。

さて、今日はトイレで読んでいた本の紹介。
『ワインと戦争 ナチのワイン略奪作戦』(クリストフ・リュカン著/法政大学出版局刊)
第2次世界大戦で、フランスはドイツ軍に席巻され、北半分が占領下に置かれ、南半分と植民地がヴィシー政府の統治下に置かれます。
ドイツは、フランスの経済力を巧みに利用し、その資源を効率的に収奪する仕組みを整えていきます。
それは工業力ばかりでは無く、農産物も対象でした。

この本では収奪システムの中で、フランスらしいと言えるワインに焦点を当て、かなりの一次資料を駆使しながら、占領下に於けるワイン取引の実態を明らかにしようとしています。

ドイツに占領された国々は様々な方法で抵抗したわけですが、フランスもレジスタンスを中心にした抵抗を行いました。
それは経済界も例外では無く、様々なサボタージュで生産力の低下を起こしています。
ただ、それは一面的なものであり、殆どポーズに過ぎません。
彼等の大多数は、ドイツ占領当局への協力に積極的で、このビジネスチャンスを逃すまいとあの手この手で莫大な利益を得ています。
そうした人々は、ドイツの勝利を信じて疑わなかったのですが、北アフリカが失陥し、本土に連合軍が攻め込んでくる状況になると、変わり身が早く掌返しをして、レジスタンスに積極的に関与したとか、間接的にレジスタンスの闘士を匿ったとか、資金を提供したと言うような話を作っていったのです。

その結果、対独協力の事実は置き去りにされ、対独解放後に裁判所に訴追されて、一審では有罪になっても、裏から手を回して、結果的には無罪を勝ち取っていきました。
彼等に不利な記録は何時の間にか消し去られ、その全貌を掴むには途方もない苦労が必要です。

この著者は、ワインの取引という観点から、その途方もない苦労を自ら背負い込み、一次資料を丹念に渉猟して、断片的な情報を繋ぎ合せて、ワインに関わる人々の対独協力の姿を改めて浮き彫りにしています。
ただ、核心の資料は当事者によって無かったことにされているのですから、周辺の断片的な情報を繋ぎ合せていかなければならず、数字の辻褄が合わない部分も出て来ます。
実際読んでいて、訳が分らなくなる部分も屡々ありました。

しかし、それらの資料を繋ぎ合せると、取引の実態が見えてきます。
特に、モナコ公国経由の取引の実態や北アフリカワインの取引、アルザス地方を経由したワインの取引の実態はよく再現された方です。

日本なんかに比べ、欧州では比較的こうした大戦中の記録は残っていますが、経済に視点を置いた記録と言うのは意図的に隠されたり、処分されたケースが多い訳で、その辺は日本の事を悪く言うのもなぁと言う感じを受けました。

ワイン関係の本は時々読んでいますが、歴史とかに重点を置いた本は余り読んでいませんでした。
失敗したなぁと思ったのは、この本を読む前に、訳者あとがきを先に読むべきだったなぁと。
訳者の宇京賴三と言う人は、独仏文化論を専門にしている人なので、こうした部分の蘊蓄が非常に豊富です。
こうしたワインを媒介としたドイツとフランスとの関係とその歴史について、訳者あとがきで触れてくれているので、これを最初に読んでいればもう少しすんなり頭に入ったかなと思った次第です。

一つだけ、残念だったのはこの取引の実態は、飲用のワインが中心で、工業原材料としてのワインの動きについて余り触れられていないことです。
特に、ワインから作られる酒石酸は潜水艦のソナーの集音装置を担う原料です。
ドイツ海軍にとって、ワインの調達は主力艦である潜水艦生産の要と言っても良いものですから、その辺の取引実態が明らかになれば、ドイツの軍需経済の実態にも切り込めるのになぁと思いました。

ワインと戦争: ナチのワイン略奪作戦

ワインと戦争: ナチのワイン略奪作戦

  • 出版社/メーカー: 法政大学出版局
  • 発売日: 2019/08/23
  • メディア: 単行本


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