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日本の砂糖近世史 [読書]

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今日は朝から雨。
昨晩は早めに眠気が襲ってきて、じっくり8時間寝られました。
まぁ睡眠導入剤の処方通りに服薬したからですが。
ただ、眠りが深すぎて注意です。

そして、今日は終日雨だったので引き籠り。
れにちゃんのソロコンを見て、他に長時間動画を見て暇潰し。
後、1冊本を読み終えました。

そう言えば、密林のおすすめ商品の欄にあった一覧表示が先週くらいから表示されなくなり、中身を見られなくて非常に困っていたのですが、今日から復活したみたいです。
何かの改造をしていたからなのか、それとも単なるミスなのかは分かりませんが、表示されたら場違いな本とか、Kindle本とかを消す事が出来なかったので、ホッとしています。

そんな訳で、読み終えた本の紹介。
『日本の砂糖近世史』(荒尾美代著/八坂書房刊)。

日本には四国地方に和三盆と言う国産白砂糖があり、また奄美や琉球が黒砂糖を生産して、薩摩島津家経由で国内に流通していたのですが、砂糖が本格的に日本国内に出回るようになったのは、戦国時代末期の南蛮貿易からと言われています。

江戸時代初期には、オランダ(蘭印)、清、東南アジアからの主要輸出品として砂糖が取り扱われ、その為の対価として日本から多くの金銀が流出してきました。
これを憂慮した江戸幕府は、砂糖を海外から輸入せず、国内生産に切り替えることを検討し始めました。

この為、中国商人に砂糖の栽培方法を諮問し、実際に砂糖黍を国内に配布して栽培させます。
また、砂糖生産に成功した長府毛利家や薩摩島津家などに役人を派遣して、その役人たちの見聞に基づき、国内で砂糖黍からの砂糖生産方法を開発して、それを各大名家に開示して砂糖生産を促していきます。
その結果、現在でも残っているのが四国地方で生産されている和三盆になった訳です。

しかし、その生産は現在の、特に和三盆の生産方法とは異なり、土を上から被せて糖液から蜜を析出し、純化する手法でした。
砂糖の専門家である著者にとっても、白い砂糖を生産するのに黒い土を上から被せると言う生産方法は衝撃的だったみたいです。
その土はどんな土なのか、何でも良いのか、条件が何かあるのか、など不明点が次から次へと湧いてきます。

一体、その技術がどこからどの様にして日本に移入されたのか、そして日本での技術発展の過程、更に土を被せる方法から、現在の和三盆の生産方法である加圧法にどうやって発展していったのかを詳細に検討して行ったのが本書です。

元々、日本人の砂糖の嗜好としては、白砂糖より黒砂糖が好まれていたそうです。
黒砂糖の販売価格は原価の10倍にも達したそうな。
一方の白砂糖は2~3倍なのですが、白砂糖を仕入れても中々売れなかったらしい。

これは江戸時代中期に至っても同じで、白砂糖でも蜜が残っている状態のものが売れたそうです。
そりゃ、出島貿易の商人達は笑いが止まらなかったでしょうね。
この為か、和三盆でも薄らと蜜が残っている状態になっています。

現在でも、欧米では蔗糖ほぼ100%のグラニュー糖=砂糖なのですが、日本ではブドウ糖と果糖の混合物である転化糖を加えた上白糖=砂糖となります。
これは海外では作られていないそうです。
そう言う意味では、いくら欧米化されたとは言え、日本人の味覚というのは今に連綿と続いている事になります。

因みに、土を被せて砂糖を析出する覆土法と言うのが、長いこと謎の侭でしたが、その源流が東南アジア、特にヴェトナムで残されていたと言う事で、1章を割いてヴェトナムでの現地調査の結果も書かれています。
今では彼の国でも経済発展のため、この覆土法を用いた白糖生産は行われなくなったそうで、最後の機会を捉えてその技術を確認することが出来た訳です。

恐らくこの覆土法は華南地方で開発されて、東南アジアに伝播し、それが日本に伝わったのですが、日本では手間の掛かる覆土法は好まれず、油などの抽出に用いている圧搾機などを基にした簡単な機械を使って圧搾する加圧法が開発されると、そちらが主流になって行ったと考えられます。

因みに、和三盆で使われている加圧法と言うのは日本独自の製法であり、海外では行われていないものだそうです。
これも、日本人の海外技術を発展させ、それを基に独自の手法を開発したものの1つなのかも知れません。

砂糖生産の技術的な話は余り理解出来なかったのですが、生産技術の話は興味を持って読むことが出来ました。
そもそも、未だに日本人の甘味に対する味覚が殆ど変わっていないことにビックリですね。

日本の砂糖近世史−−土を使って白くする! 製造の秘法を求めて

日本の砂糖近世史−−土を使って白くする! 製造の秘法を求めて

  • 作者: 荒尾美代
  • 出版社/メーカー: 八坂書房
  • 発売日: 2018/03/27
  • メディア: 単行本



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