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「国連運輸部鉄道課」の不思議な人々 [読書]

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今日は在宅勤務。
フレックスでリハビリに出掛けて、明日は久々の成田行と勇んでいたのですが、そう言う日に限って明日明後日は大荒れの天気と言う話で凹んでおります。

仕方ない、明日は引き籠もって確定申告とリフォームの検討を進めるとしますか。
そう言えば、確定申告は今年カードを貰ったので電子申請が出来るのですが、IEかEdgeかChromeで無いと駄目らしい。
わたしがよく使っているFirefoxもVivaldiも駄目だそうで、作ろうとしたらエラーになると言うね。
せめて、Chromeベースのブラウザなら認めて欲しかったです。

さてここ最近、トイレで読んでいた本の紹介。

『「国連運輸部鉄道課」の不思議な人々 -鉄道エンジニアの国連奮戦記-』(田中宏昌著/Wedge刊)。
11年前の本で、著者はJR東海の元副社長。
JR東海の関係者だからWedgeが出版したのかとも思わないでも無い。

表題の国連と言えば、国際連合、言わずと知れた国際機関の雄です。
国連に運輸部?鉄道課?国連が列車を動かすの?…とこの本を見たときには少なからず違和感を覚えました。
国際連合と言っても、拠点は彼方此方にあり、ニューヨークにある国連本部はほんの一部分に過ぎません。

筆者が在籍していた国連機関は、ESCAP、正式名称は「国連アジア太平洋経済社会委員会」と言い、本部はタイの首都バンコクに設置されています。
アジア太平洋とある通り、アジア太平洋諸国の経済や社会発展を目的とした国連の組織で、アジア太平洋地域の49の国と9地域の自治領などの準加盟メンバーからなっており、旧宗主国である仏、蘭、英、米の4ヶ国が域外加盟国となっています。

関係者によれば、国連の安全保障理事会や総会は臨床医学の世界、ESCAPの様な地域機関は予防医学の世界に例えれば判りやすいらしい。

1980年代、日本は国際社会での地位向上を目指し、様々な国連活動に参加していました。
ESCAPも例外では無く、その中の運輸部鉄道課にも政府の要請で国鉄から人が送り込まれました。
それが筆者だった訳です。

ある程度の国際経験はあったものの、国連機関の中に入るのは初めてで右も左も判らないところでしたが、幸いにも仲間となる組織内の日本人や大使館員達の協力で仕事を段々と仕事に乗せていきます。
特に、各国の鉄道統計の指標を均一にし、統計を見て補強のポイントを見つけ出す活動や、船舶から直接貨車に乗せて、陸上の様々な場所に荷物を送るコンテナ輸送の推進、事故を減少させるための信号システムの導入などは著者と日本人の仲間が船頭を務めていました。

とは言え、ESCAPも国連機関ですから、その官僚主義的なところは日本以上で、隣の部屋にある部署から資料を貰うだけなのに正式なレターを書いてメッセンジャーを仕立てて送らないと駄目だとか言うのに面食らったりしています。

また国際機関ですから、様々な国の人がいます。
鉄道課には、日本人数名の他、運輸部長は南アジア出身ですし、顧問には西ドイツ国鉄から派遣されていたドイツ人博士、部長代理の地位を虎視眈々と狙っていた偏屈者のユダヤ系米国人、更には合法的に国連に送られてくる資料を本国に流しているGRUの中佐殿と言った個性的な面々が集まっていました。

仕事だけで無く、外国での生活についても章を割いています。
例えば、彼等も国連職員なので、外交特権を持っています。
その特権を利用して、タイでは輸入の難しいベンツを買い、数年使ったらそのまま金持ちに横流しをする事で小金を稼ぐ人も後を絶ちません。
それは当時のタイで社会問題化していたそうです。

筆者はバンコクで数年を過ごしましたが、最後の年は運輸部が野心家の部長に取って代わられて、次第に組織が活力を失っていく様を書いています。
これには筆者もかなり腹に据えかねたと思われ、他の人達は渾名やイニシャルで書いているのに、この部長だけは実名で書かれています。

他にも、異国の地に於ける日本人同士のいがみ合いとかも書いてあったりして、国際機関に興味を持っている人ならば一読しておいても良い様な本かなぁと思ったりもします。

ただ筆者も嘆いていましたが、10年前の日本人の若者は(今はどうか知りませんが)、国際機関で働く気概を持っている人が少なかったそうです。
それで無くとも当時でも拠出額などから行けば適正人数が150人くらいだったのに、その半分以下の60人程度しかいなかったとあります。

今は更に減っている様ですね。
代わりに隣国が伸してきているのかな。
これで「安保理の常任理事国」になろう、なんて片腹痛いのですが。
お金だけで無く、せめて人的貢献をしてから、こうした話を出さないと駄目なんじゃ無いか、と思いますけどね。

「国連運輸部鉄道課」の不思議な人々―鉄道エンジニアの国連奮戦記

「国連運輸部鉄道課」の不思議な人々―鉄道エンジニアの国連奮戦記

  • 作者: 田中 宏昌
  • 出版社/メーカー: ウェッジ
  • 発売日: 2011/02/01
  • メディア: 単行本



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