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中東深夜便紀行 [読書]

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今日は流石に全身筋肉痛。
おまけに肩も痛い。
よって、年休にしようかと一瞬頭をよぎったのですが、今日は外せない会議が2つもあったので諦めました。
しかし、18時から入れられた会議、主宰者がいなくて1時間延期した上、終了が20時半になったので、スーパーに行けず、御陰様で明日雨の中スーパーに寄って、手袋とヨーグルトと蜜柑と風呂掃除用のモップを買ってこなければなりません。
と言うか、時間通りに会議を行って、自分が駄目なら中止しろよ、と思ってみたり。

結局、土曜日、日曜日の釣果は整理出来ず仕舞いです。

その代わり、ここ最近読んでいた本の紹介。

実は、通勤の行き帰りに色々と本は読んではいるのですが、最近読んでいたのは、『電車の顔』シリーズで余り書く事が無かったり、また、折角読んでも著者の政治的信条と小人的体質が鼻について、途中で読む気を無くしたりしたものが多くて、紹介するまでに至りませんでした。

『中東深夜便紀行 テレビ特派員が飛んだ中東・アフリカ空の旅』(荒木基著/イカロス出版刊)

作者は、テレ朝の中東特派員を長く勤めた方なので、時たまニュースショーに出ていたのでは無いでしょうか。

日本のテレビ局の中東の特派員支局はエジプトにあります。
エジプトと言えば、一般の日本人にとってはエジプトとスフィンクス、少し年配の人なら、スエズ運河とか中東戦争の戦場とかアラブの春とかが有名なのかも知れませんが、エジプトという国を中から見たらどうなのか、この国に暮らすと言う事はどう言うことなのか、そうした興味の一端をかき立ててくれる本です。

題名にある様に空の旅の話がメイン。
世界の中のエジプトという面で言えば、昔はスエズ運河があった為に海運の流れの中心でした。
しかし、航空路という面で言えば、アブダビとかドバイとかカタールと言う中東湾岸諸国が石油ビジネスを脱却するために、新たに航空業界に打って出たのに対して、20世紀まではアラブの盟主を誇っていたエジプトは、何時の間にか時代に取り残され、先に挙げた各国が航空路のハブとなっていったのに対し、対照的にハブからスポークの末端へと落ちぶれて行っています。

しかし、エジプトの航空業界の人達は未だにそれを受容れる事が出来ず、従って、過去の栄光に縋るようにしている、と。
御陰で、著者から見たエジプト航空は、「出来れば使いたくない」航空会社であり、事実、著者が乗る場合、余程の事が無い限り、エジプト航空の飛行機をチョイスする事はありません。
寧ろ、トルコ航空を筆頭とするトルコ系の航空会社が頻繁に登場します。

時に特派員という仕事柄、彼方此方の国に飛ぶ訳ですが、海外に赴いている人が潤沢では無い為、欧州支局の特派員は欧州だけ、中東支局の特派員は中東だけと言う様な明確な棲み分けが出来ていません。
よって、本社から連絡が入るのはその地域の特派員だけで無く、周辺地域の特派員にも連絡が行くそうです。

著者は特派員ではありますが、学生時代からマグレブ諸国や中東諸国を見聞していました。
それは、そもそもが飛行機ヲタだったからと言うのもあります。
しかもFSCで飛ぶ事は一切無く、少しでも安上がりの方法を常に探していました。
なので、日系の航空会社は使わず、Aeroflotと現地の航空会社を組合わせるとか言う感じの旅の仕方をしており、それで鍛えられたのか、少々のトラブルがあったとしても上手く切り抜けています。
また、日頃から飛行機のダイヤを熟知していて、例えば、ロシア占領直前のセバストポリの取材なんかは欧州組よりも早く現地に入っていますし、ガザの国境でイスラエル戦車が越境するのを待っている時に一報が入って、翌日朝にはもう欧州の飛行機の墜落現場で取材していると言った話が随所に出て来ます。

謂わば、特派員の仕事の一端を垣間見る事も出来るのです。
また、ISが猖獗を極めていた頃のシリアとトルコとの国境地帯で取材していた時、若い日本人女性が観光で来ているのを見て、平和の有難味を改めて感じたりしています。

こんな感じで、おっさんだらけの生き生きとした生活も活写されています。
特に笑ってしまったのは、エジプトでは日本食材が手に入らないので、まず出張者に御願いするのは不足している日本食の材料のハンドキャリー。
また、宗教上の理由で豚肉が手に入りにくいので、ハムやらソーセージを欧州諸国で仕入れて「密輸」し、家の冷蔵庫に保管したのも束の間、何処から漏れたのか、駐在員の奥様方に自宅を襲撃され、泣く泣くこうした戦利品を放出する羽目になったとか。

食べ物話だと、米は栽培しているものの、日本のコシヒカリが食いたいと、エジプト航空の手荷物上限一杯一杯の46kgをすべてコシヒカリにして持ってきた人の話とか、空港職員と、「豆腐は液体か固体か」で押し問答するとか、生卵の販売が為されていないか、あっても雑菌だらけで食べられない事が多いので、日本のスーパーで買った生卵のパックをエジプトまで持ち帰り、各局の駐在特派員に卵と納豆入荷という知らせを出したら、ライバル局の垣根を越えた連帯が、卵かけ御飯を囲んで生まれると言う話も。

日本に住んでいると信じられないですが、外国では様々な苦労があるのだなぁと。

勿論、中東を中心としたエアラインでの旅(と言っても、いずれもサービスが充実している一流航空会社に比べるとかなり落ちますが)なんてのも随時収録されているので、読んでて飽きませんでした。

旅客機ファンはもとより、特派員の仕事、中東やアフリカに興味のある人にはお勧めです。

中東深夜便紀行 (テレビ特派員が飛んだ中東 アフリカ空の旅)
イカロス出版
2018-11-30
荒木 基

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