SSブログ

ふしぎ地名巡り [読書]

CEB_A330-300_C3348_0008.jpg

週の後半を在宅勤務にしている御陰で、月曜と火曜日に出勤するのが苦痛になってきました。
これが月曜と水曜という感じで隔日だったらそれなりに良い感じになるのですが。
まぁ、御陰で行き帰りは電車の中で本が読めます。
とは言え、行きの電車の中では専らスマホを見ているのですが。

此処暫くは家人の関係で、早めに切り上げているのですが、久々に駅に行くと何時もは閉まっていた書店が開いていました。
どうやら18時までは開いているらしい。
と言うので、久々に書店に寄って色々と大人買いをしていました。
まぁ、この数年間は読む本に困りません。

そんな訳で、ここ数週間読んでいた本の紹介。
『ふしぎ地名巡り』(今尾恵介著/ちくま文庫刊)
地名についての著書の多い人ではありますが、実は地名学とかの泰斗とかそんな人では無く、在野の地名マニアにしか過ぎません。
ただ、地名についての蘊蓄は深く、また面白い地名を求めて日本はおろか世界各地に実際に行っているので、その経験が豊富な知識として蓄積されています。

日本の地名と言うのはそれこそ津々浦々に無数にあります。
ファミリーヒストリーとかの番組では、苗字から地名を探すと言う感じで手がかりを探したりもしていますが、この本では、そう言った地名の中でも特に変な地名をピックアップして、それがどう言う成り立ちで成立したものか、豊富な蘊蓄の中から紹介しています。

著者的には地名と言うのは、歴史の鉱脈でもあるという考えもあるのですが、近代に入ってからは過去3回地名が大改編されて混乱が生じ、歴史的な地名が実は歴史的でも何でも無い地名であると言う問題が生じています。

まずは明治期に行われた合併。
此の時は江戸期に多数存在した庄屋や名主を中心にした村々を、税を取りやすく、かつ管理しやすい規模に纏める形を採りました。
歴史的地名については大字とか字名で何とか残りましたが、新たに合併した村の中には、その名称で揉めて合成地名になってしまい、歴史とかけ離れた地名も出て来ました。

次が戦後に行われた昭和の大合併とその後に吹き荒れた町名整理の大嵐。
これも行政効率化の一環として各地で合併が進められ、合成地名が成立した地域も多く出ました。
その後、オリンピック開催を機会に、東京が行ったのが町名整理。
これが地名にとっては一番の改悪で、数々の由緒ある町名が一気に消滅していきます。
この動きは全国の主に都市部に波及し、特にブランド地名については、歴史とは何等関係の無い地域にも適用され、歴史の重層を全く剥がすようなことをしてのけています。

ダメ押しが平成の大合併です。
明治や昭和の合併が、まだ合成地名や国名を冠に付ける位の可愛いものだったのに対し、平成の大合併は何でもあり。
川之江市と伊予三島市の合併では、宇摩郡から来た古代からの地名である宇摩市が住民の意思としてはダントツだったのに、「東京でも通じるように」という変な理由で、四国中央市なんて変な地名になったり、外来語由来の片仮名地名とかが出るようになったら、もう地名は時代の化石なんて言っていられません。

ま、うちの地域は鳩ヶ谷市から川口市になってから日が浅いですから、そんなに変な地名が付いてはいませんが、昭和の地名改編の際に付けられたであろう本町やら南町なんて言う地名が出来ていたりします。

そうそう、うちの地域は鳩ヶ谷町だった時分には、北足立郡に属していました。
足立区と言えば東京23区に含まれていますが、足立郡は元々は武蔵の郡名で、郡衙は今のさいたま市大宮区付近にあったそうです。
それが、明治期に東京と埼玉に分かれると埼玉県の足立郡は北足立郡、東京府の足立郡は南足立郡にmなり、区に昇格する際に、南足立郡の南が取れて、東京都の方が本家面をしていると言う訳です。
もっとも、さいたま市にしたって、古代地名の「さきたま」から採ってはいるのですが、元々の埼玉郡は何処かと言えば、春日部、越谷、久喜、八潮、蓮田、行田、羽生という県東部の地域なので、簒奪したと言えば言えなくも無い訳で。
因みに、今、北足立郡には伊奈町しか残っていません。

薄い本なのですが、こんな蘊蓄が目白押しで、地名好きは勿論の事、歴史好きにも手軽に愉しめる本になっています。

ふしぎ地名巡り (ちくま文庫)

ふしぎ地名巡り (ちくま文庫)

  • 作者: 恵介, 今尾
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/01/10
  • メディア: 文庫


タグ:読書 雑記
nice!(1)