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イタリア料理の誕生 [読書]

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今日は全身筋肉痛。
最近、週末に中々身体を動かす機会が無かったので、流石に身体が鈍っていたようです。
そして、帰りにやっとこ不在者投票に行けました。
全く、2回も無駄足を踏んだ訳で、投票率が低くなるのが判るような気がします。

さて、今回は本の話。
『イタリア料理の誕生』(Carol Helstosky著/小田原琳、泰泉寺有紀、山手昌樹共訳/人文社刊)。

以前、寝物語でイタリア料理に関する柴田書店の本を読んでいたことがあったのですが、それに興味があって買った本です。
しかし、目からウロコが落ちました。

よく考えてみると、イタリアにしろ、フランスにしろ、ドイツにしろ、勿論、日本や中国もですが、1つの国の括りで料理を論じるのは間違っています。
料理というのは地域性のあるものですから、日本でも江戸前と京料理があるが如く、フランスだってプロバンス料理と地中海料理はまるで異なりますし、ドイツだって地域によって様々な料理があります。
中国だって、四川料理や広東料理など地域で分かれているわけですから、1つの国と言う括りで料理を論じることが出来ません。

イタリアも同様で、北方のジビエ料理と地中海に面した地域のイカやタコなどの海産物を使った料理はまるで違います。
その上、イタリアの場合は、国が長いことバラバラでした。
それは日本も同じで、両方とも急速に中央集権化を進めています。

主食にしても、日本では都市部は白米を食べていたのですが、玄米を食べていたり、雑穀が主食だったり、芋を食べていたりと様々です。

イタリアのイメージと言えば、ピザやパスタと言った小麦粉を練って作る料理が多いです。
第2次大戦のジョークに、「イタリア軍はパスタを茹でる水が大量に要るから、直ぐに飲料水が尽きる」なんてのがありました。

ところが、イタリア統一から第1次世界大戦直前まで、イタリアで主食と言えば、玉蜀黍粉を原料にしたパンでした。
勿論、小麦を食べる人もいますが、経済力の違いで食べるものや量が異なり、南になるほど小麦の摂取量は減り、全体でも摂取する栄養価は低いままです。

当然、南の貧農や下層庶民層は餓死の危険性もあるので、母国を捨てて新天地を求め、新大陸へと渡っていきました。
そこで出会ったのが、安定した職と共に安くて大量に食べられる小麦などの穀類です。

ある程度食べられるようになった移民達は、自分達の地域で食べられていた食物を懐かしく思い、豊富な穀物を利用したソウルフードを同胞のみならず、他国の移民達にも振る舞うようになります。
こうした食べものを作るためには、祖国に生産用の機器を発注しなければなりません。
かくして、ピザ用の窯とか輸入した小麦を使った乾燥パスタとかトマトソースが作られていきました。

それらは移民のいる地域に輸出され、国内の人々を潤すと共に、彼等もまた生活水準向上で、パスタやピザを食べ始め、それらがステータスシンボルとなっていった訳です。

こうした食べものが一気に世間に広まったのは第1次世界大戦の頃で、連合国側に立って参戦したイタリアは、連合国からの小麦を中心とする穀物の供与を受け、栄養価の向上に力を入れます。
但し、人々がこうした食べものを求めるには充分ではなく、かと言って、国内農業や食品工業の能力不足から、参戦後は小麦が不足し、敵国の捕虜となった人々に十分に物資を送れず、ドイツの捕虜収容所で最も栄養価の低い食べものを与えられていたのがイタリア人だとまで言われました。

第1次世界大戦は戦勝国にこそなりましたが、第1次世界大戦後は不景気の到来と対外政策の失敗、更に終戦で連合国からの穀物輸入が途絶え、国内は混乱が生じます。
これに乗じたのがファシスト党で、社会の混乱に乗じて政権を奪取します。
政権奪取後は混乱した食糧政策を立直し、食糧生産を軌道に乗せようとしますが、小麦戦争と呼ばれる生産競争の無理強いでまた農業に打撃を与え、挙げ句エチオピア侵攻で躓き、経済制裁で国内の産業が壊滅的になりました。

その状態でバスに乗り遅れるなとばかりに第2次世界大戦に参戦したため、1945年までずっと尾を引き、闇市の隆盛を招くと共に、遂に食糧生産は19世紀並に後退した訳です。
終戦後も同じ様に混乱しましたが、ここからは「イタリアの奇跡」と呼ばれる経済成長により、国民の所得が上がり、農業生産力も向上します。
また観光資源としてのイタリア料理が有名となり、庶民もその恩恵を被るようになる訳です。

一方で、経済成長は、人々から余裕を無くしました。
スーパーマーケットの進出やファストフードの展開など他国からの文化進出も多くなります。
イタリアの人々はそれを単純に受容するのでは無く、よく吟味して受容する事をしていて、確かに両者は増えはしましたが、その伸び数はじんわり増えている感じです。

このように、イタリアの食を通じてイタリア統一からスローフード運動までの期間を通じての同国の近代史を辿るのが本書です。
イタリア料理を起点にした歴史の展開を見るというのは、新たな視点ですし、他の国でもこうした視点で歴史を論じることも出来るんじゃ無いかなぁなんて思いました。
それにしても、パスタやピザの歴史がそんなにも浅いものだとは知りませんでした。

イタリア料理の誕生

イタリア料理の誕生

  • 出版社/メーカー: 人文書院
  • 発売日: 2022/08/24
  • メディア: 単行本



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ふたつのドイツ国鉄 [読書]

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今日も出勤。
最近は電車に不慣れな新入社員が多くなったからか、電車がかなり遅れるようになりました。
1ヶ月くらいはこの調子でしょうかねぇ。
で、今日は帰りに雨に降られるかとハラハラしていたのですが、駅に着いた途端に雨が止んだみたいでラッキーでした。
時間通りに着いていたらどうなっていたか判りません。

しかし、今日は花粉がヤバかったです。
まぁ、花粉なのか黄砂なのかが判断付かないのですが、目が痒くて、かと言って目を擦りすぎると、まためばちこ(結膜炎)が出来てしまうので、なるだけ触らないように、余りに痒ければ目薬を注すと言うので乗り切りました。

ただ、目薬を注すのは相変わらず苦手で、全部流れてしまうのが玉に瑕です。

さて、今日は通勤で読んでいた本の紹介。
『ふたつのドイツ国鉄 東西分断と長い戦後の物語 」(鴋澤歩著/NTT出版刊)。

一言で言ってしまえば、戦後ドイツの国有鉄道経営史です。
第2次世界大戦で敗北したドイツは英米仏ソの4ヶ国に分割占領されます。
大戦では国内の鉄道網は連合軍の空爆や砲撃に晒され、かなり破壊されました。

英米仏の3ヶ国占領地のうち、仏占領地を除く2ヶ国の占領地では輸送手段の復興として、いち早く国鉄当局の動きが立ち上がり、当初は賠償を優先に考えていた仏占領地でも冷戦が深まるにつれて、英米に歩調を合わせて復興に重きを置くようになりました。

一方、ソ連占領地では復興よりも賠償が優先され、占領地では線路や車輌、設備が引き剥がされソ連に持ち去られていきました。
このため、ただでさえボロボロだった東の鉄道網は中々復興できずにいます。

この本では西ドイツ国鉄と東ドイツ国鉄の2者を対比しつつ、その特徴とか成長過程、それらが行われた時代背景などを述べたものになります。

しかし、西ドイツの国鉄については1950年代から60年代頃までは詳述されていますが、それ以降の低迷期についてはかなり等閑な印象で、東ドイツ国鉄についても全国的な経営政策や労働政策、更に党との関係については、1960年代までの段階までかなり詳しい記述が見られますが、1970年代以降の低迷期や1980年代の東ドイツ滅亡までの過程、特に共産主義国家特有の中央集権政策と州の地域主義との鉄道整備についてのせめぎ合い(特にベルリン対ザクセンなどの工業地帯の綱引きなど)については余り触れられていません。
多分叢書サイズの本で全部を纏めるのは恐らく難しかったのでは無いかなと思います。

一方でこの本の大部を占めるのは、ベルリンの鉄道、特にSバーンについての経営史です。
ベルリンは特殊な地域で、東ドイツ崩壊まで4ヶ国の共同占領下にある都市と言う位置づけでした。
勿論、東ドイツの首都でもありましたが。

周囲をソ連占領地に囲まれているため、鉄道については東側が主導権を握っており、Sバーンと呼ばれる都市鉄道は西ベルリンにも乗り入れていました。
そして西ベルリンには駅もあり、駅員や修繕工場の労働者など西ベルリンに居住しながらも東ドイツの鉄道員となっていた人達の存在があったりします。

西ベルリンと言う資本主義のショールームのど真ん中に住んでいながら、生活水準の劣る東ドイツ国鉄の職員というのがかなり特殊な地位です。
ベルリンの壁が作られても、不満を持ちながらも彼等はそのまま勤務し続けています。

各時代の彼等に対する労務政策や東ドイツ国鉄が行った西側でのSバーンの経営施策などがこの本でも興味深いところです。
と言うか寧ろ、ドイツ全体に焦点を当てるより、Sバーンに特化した方が良かったように思えますね。

まぁ、時代背景を理解する上での東西ドイツ国鉄の対比という意味でこれらの2つの国鉄を論じたのかも知れませんが。

作者が経済学者である為、車輌の写真や華々しい技術的側面の話は殆ど出て来ませんが、冷戦の裏面史と言う部分に興味のある方は読んでも損は無いと思います。

ふたつのドイツ国鉄 ―東西分断と長い戦後の物語 (人文知の復興 2)

ふたつのドイツ国鉄 ―東西分断と長い戦後の物語 (人文知の復興 2)

  • 作者: 鴋澤 歩
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 2021/03/25
  • メディア: 単行本



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世界エアライン地図帳 [読書]

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今日は在宅にする予定だったのですが、気の迷いで出社に変更。
すると、見事に寝坊して目が覚めたら8時過ぎ。
それでも、今日は出社しないといけなかったので、遅れながらも何とか10時前に出社しました。
気が付くと、明日で今年度終わりなんですよね。
この前正月を迎えたと思ったのに、あっと言う間です。

さて、ここ最近、寝床で読んでいた本の紹介。
『世界エアライン地図帳』(チャーリー古庄著/イカロス出版刊)。

毎度毎度同じ様な本ばかりで恐縮ですが、世界の約150ヶ国にある、ある程度の規模の航空会社や特徴の有る航空会社の紹介本です。
全部で350社にも及ぶ航空会社を取り上げているので、当然のことながら内容は薄く、作者が撮影した写真と、少数のキャプションでの紹介に留まっています。

勿論、きちんと紹介しようとしたら150ページ程度では収まり切りませんし、お値段も結構するものになってしまいますし。
イカロス出版からは『エアライン年鑑』と言う本も出ていて、ここ5年間続刊が出ていないので、そろそろ最新版を出版してほしいのですが、そうは言いつつ、2019年頃から今年に至るまでのコロナ禍の御陰で、様々な航空会社が倒産したり、破産したり、運航を停止したりしています。

その傷はかなり深く、フラッグキャリアと呼ばれる国を代表する航空会社も例外ではありません。
最近では、Asiana Airlinesが大韓航空との経営統合に追い込まれましたし、Aeromexico、Philippine Airlines、Thai Airways Internationalが倒産したりチャプター11適用になったり。
更に、欧州ではAlitaliaが事業停止、日本でもAirasia JapanやVanilla Airが消滅するなど、激動の時代です。
成田空港に就航しても、直ぐにいなくなる航空会社も多く有ります。

それだけ毀誉褒貶の激しい業界なので、毎年のアップデートは欠かせないのですが、そんな間隙を埋めてくれる本がこの本では無いかなと思ったりする。

体裁は、全世界を7つのエリアに分けて、それぞれのエリアの状況を解説した章を1章設け、その後、それぞれの航空会社の飛行機の写真を1枚と、概況を簡単に書いていると言うものです。
勿論、会社の大小で解説の多少は異なります。

とは言え、大手の航空会社だけで無く、LCC、ULCC、更に地域密着のコミュータエアライン、貨物専業の航空会社に至るまで、幅広く取り上げています。
また、そのエリア内でグローバルに展開している航空会社、例えば、Air Asiaグループとか、DHL、LATAMやeasy jetなどの航空会社についても、或いは1章を割き、或いは別コラムで取り上げています。
しかし、これらの会社の飛行機の塗装は大体同じものばかりですから、その辺は簡単に済ませています。
日本も、7つのエリアの1章を割いて紹介しています。

こうした部分に興味のある人は、日本のスポッターさんには余りいないのかも知れませんが、私は軍ヲタ出身なので、この飛行機の出自は、とかこの会社はどんな変遷を辿っているのか、とかその辺興味のある方だったりするので、とても参考になりました。

世界エアライン地図帳

世界エアライン地図帳

  • 作者: チャーリィ古庄
  • 出版社/メーカー: イカロス出版
  • 発売日: 2023/02/27
  • メディア: Kindle版


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ビンテージバスに会いたい [読書]

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明日は健康診断なので、今日は早めに帰宅。
と言っても、18時半頃までウダウダしていたので、家に着くと20時だったのですが、鳩ヶ谷に着いた19時40分頃にふと行き先表示を見ると、目黒方面の電車に強烈な違和感が。
こんなに早い時間なのに、何故か「最終」の文字が。

確かに、相鉄線の湘南台に向う電車はこれが最終なのですが、普通、最終電車と言えば23時以降のイメージなので、こんなに早い時間の最終電車表示なんてかなり違和感しかありません。
はっきり言って、何処のローカル線かと小一時間問い詰めたくなりました。
それに、途中で乗り換えれば、湘南台まで行くことが出来るのでは無いでしょうか。
あそこまで3時間以上も掛かるのかなぁ。

そんなことはさて置き、今日も通勤の行き帰りに読んでいた本の紹介。
最近、電車の中でスマホを見るのも段々と退屈してきたので、本を読むことの方が多くなりました。

『ビンテージバスに会いたい』(加藤佳一著/山と溪谷社刊)。
ビンテージバスというと、一般的には1950年代や60年代に主流だったボンネットバスを思い浮かべることが多いのですが、最近のビンテージバスの範囲はかなり拡大して、1970年代に沖縄返還で活躍した730車、更には1980年代のスケルトンバス、1990年代の豪華貸切バスと言ったものや連節バスまで、その範疇に含まれるようです。

この本は、日本各地に存在している営業車輌、博物館に展示している車輌も含め、1990年代までの旧型のバスを一同に紹介した本です。
まぁ、個人所有のバスは含まれませんが、それでもそうした個人が集まった日本バス保存会や福山自動車時計博物館と言った、バスを何台か集めて動態保存している団体も取り上げています。

この本は2部構成になっていて、1つは動態保存というか、まだ現役としても活躍しているバス達の紹介をしています。
日本と言う国は、こうした産業遺産に対する理解が無く、例えば古い車を保有しようとしたら、バカ高い車検を通さなかったりしないといけないですし、税金も現役車輌と同じ様に掛けられ、環境対応で余計な費用が必要になったりします。
従って、耐用年数が過ぎた車輌はどんどん廃車して新しい車輌に置き換えられていくのです。
当然、廃車になったバスは解体の憂き目に遭います。

そう言えば、今月で日ノ出町の日本唯一のトレーラーバスが廃車されるそうですね。
部品が無いとの理由でしたが、技術遺産がまた一つ消えることになる訳で、とても残念なことです。

最近は鉄道なんかも大手企業なら博物館を作って、技術的なエポックメイキングな車輌は保存する傾向が強まりましたが、中小企業では逆に古い車輌はどんどん廃車・解体されています。
しかし一方で町おこしや中小バス会社の活性化の手段として、古いバスを保存して運行させるという動きも少しずつ出て来ています。

ただ、こうしたバスはエンジン部品を始めとする部品類が枯渇したり、技術を担う整備士さんがいなくなったりして、折角の動態保存車も、已むなく静態保存車になってしまう問題が有ります。
今までの日本の発展を支えてきた車輌なのですから、本来は技術伝承をすると言う意味でも、国が中心になってこうしたものを保存する努力をしないといけないのですが、そんな後ろ向きな考えはこの国には無いみたいです。
1部ではそうした課題にも触れつつ、動態保存に対する運行者の苦労を描いています。

2部は、静態保存、動態保存を含め、日本の各地にあるビンテージバスの紹介をしています。
1部で紹介したものと重複する部分もありますが、全体を網羅するという意味では、こうした本は貴重では無いかと思います。

こういったビンテージバスとしては、ボンネットバスが圧倒的に多いのですが、そうした中、意外にもトラックやら消防車などの事業用車のシャーシにバス車体を架装するケースも多く有ったりします。
そう言った来歴にも触れつつの紹介で、風景に溶け込んだバスのカラフルな車体のカラー写真と相俟って、結構興味深く読むことが出来る本でした。

以前、函館に行ったときにいすゞのボンネットバスに乗ったのですが、またこうした機会があればこうしたレトロバスに乗りに行く旅に行きたいなぁ、なんてそんな思いに駆られました。

ビンテージバスに会いたい!営業車両から博物館資料まで、全国保存バスコレクション (プラスBUS003)

ビンテージバスに会いたい!営業車両から博物館資料まで、全国保存バスコレクション (プラスBUS003)

  • 作者: 加藤佳一
  • 出版社/メーカー: 天夢人
  • 発売日: 2022/08/18
  • メディア: 単行本



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あなたの知らない、世界の稀少言語 [読書]

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今日は誕生日だし、ゆっくり起きようと思っていたのですが、会社の入っているビルが瞬停と言う事で総務から電話が掛かって叩き起されました。
御陰様でパソコンを上げて状況の確認に追われることに。
ここ最近、何か呪われている気がする。

取り敢ず何事も無く1台のパソコンが吹っ飛んだだけで何とかなりそうです。
結果、終了ギリギリにリハビリに駆け込みましたが、その頃降っていた雨は、リハビリが終わると一度止んでいたのに、西友を出る頃には結構な降りになりました。

帰りにウェザーニューズの桜ミッションに参戦しているので、近くの桜を適度に撮影しているのですが、明日か明後日くらいに咲き始める感じです。
とは言え、来週は明日以外ずっと春の長雨になりそうな予報なので、成田の桜撮影は今年も叶わぬ夢になりそうですね。

さて、ここ数日通勤の行き帰りに読んでいた本の紹介。
『あなたの知らない、世界の稀少言語 世界6大陸、100言語を全力調査』(ゾラン・ニコリッチ著/藤村奈緒美訳/日経ナショナルジオグラフィック社刊)

その名の通り、世界にある7,000種類の言語のうちのほんの一部、100種類をピックアップして紹介している本です。
それらの多くは言語島と言う概念で括られており、その地域に住む人々と、その中にある言語が異なる人々が住む地域の人々との間で、どちらの言葉を知らない限り、通訳を介さないでコミュニケーションを取ることが難しい場合、その概念が成立します。

例えば、日本ではアイヌ民族や琉球人と内地の人間は、日本語を介せばコミュニケーションが取れますが、アイヌ語や琉球語を喋られると、内地の人間が理解出来ません。
こういった場合、アイヌ語や琉球語の話者の多く住む地域を言語島と言う概念で括ります。

こうした言語島は、日本でもアイヌが住む地域、琉球人が住む地域、更に八丈島の住人達が住む地域などがあります。
但し、これらの言語島は、日本の場合、単一民族論が近年まで人口に膾炙していたため、圧迫され、話者がどんどん減っているのが現状です。

また、言語は系統樹で括る事も出来ます。
インド・ヨーロッパ語族だとかウラル・アルタイ語族等と言った感じ。
しかし、アイヌ語は今のところどの系統樹にも属しません。
そう言った言語として代表的なのは他にバスク語やパキスタンのブルシャスキー語があるそうです。

この本では、こうした系統樹から孤立している言語はもとより、系統樹にありながら、オスマン帝国やロシア帝国、二重帝国の支配を受けたためにバラバラになってしまったスラブ人の言語島、大英帝国の支配に屈したために独自の言語が成立したカリブ海諸国の言語島、植民で東に拡大したドイツ語の言語島、移民が作り上げた北米内の欧州系言語島などが取り上げられています。

この本を読んでいて意外だったのがアイルランド語で、アイルランドと言う国を構成しているくらいだから純粋にアイルランド語が母語の国民が多いのかと思っていたのですが、第1公用語たるアイルランド語を母語にしている国民は、実はその中の僅か10%(ある程度の理解を含めてやっと40%)と言う少数派に甘んじているため、母国なのに言語島になっている状態。
国の言語保護政策も殆ど機能せず、言語というアイデンティティで国を結び付けるのが困難な状態だそうです。

因みに、ウクライナ・ロシア戦争で激戦地だったマリウポリにはギリシャの言語島がありましたが、この戦争で崩壊したのでは無いでしょうか。
ドイツ語の言語島もかなりありましたが、第2次世界大戦で強制送還されたり、追放されたりして崩壊したものも多くあります。

作者はセルビア人の在野の研究者だそうです。
彼が住んでいた旧ユーゴスラヴィアは多民族国家ですが、一応、スラブ語族と言う事で、セルビア語、クロアチア語、ボスニア語、モンテネグロ語、スロヴェニア語、それぞれの間で相互理解が出来ます。
但し、この国を形作る地域は過去オスマン帝国や二重帝国の支配を受けた為に、それぞれの領域から様々な民族が去来し、それぞれの言語島を作り上げていっています。
従って、5つの主要言語の他に、マジャール語やルーマニア語、マケドニア語、アルバニア語、スロヴァキア語、チェコ語、イタリア語にポーランド語が日常的に飛び交っていたそうです。

こうした言語の坩堝にいたからか、こうした様々な言語を紹介する本を作りたいと思ったそうで、記録や情報を調べて1冊の本に纏め上げたそうです。
特に欧州系の言語ではそれぞれの項目の末尾に、『星の王子さま』の各国語訳が取り上げられています。

主要言語でも、それが遠隔地に伝わり伝承されていく言語島では、内部で独自の進化を遂げ、或いは古語のまま形が残る事も有り、同じ『星の王子さま』の一節でも全然違う言葉で表されたりします。
そう言った部分にも注目すると、とても面白い本に出逢えたと思います。

あなたの知らない、世界の希少言語 世界6大陸、100言語を全力調査!

あなたの知らない、世界の希少言語 世界6大陸、100言語を全力調査!

  • 出版社/メーカー: 日経ナショナル ジオグラフィック
  • 発売日: 2022/06/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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奇妙な国境や境界の世界地図 [読書]

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今日はリハビリに行くので在宅勤務。
とある通信機器のサイトで、うちの会社の代表管理人をしているので、ライセンス登録に合わせて登録環境を作成しようとしたのに、何時まで経っても「お待ちください」画面が出続けて、何度もトライしまくり。

結局、プロキシ経由で接続するのは諦め、余りしたくなかったのですが、裏口を開けてインターネット直結で漸く登録が完了しました。
多分、サイトのどこかのURLが規制に引っ掛かっていたのでしょうねぇ。
エラー画面が出てくれれば良いのですが、今回みたいに「お待ちください」ダイアログがず~っと出続けているのであれば、サイト側のエラーなのか、こちらのエラーなのかが判断付かず、判りづらいったらありゃしません。
本当に、うちのセキュリティ部門は余計な仕事を増やしてくれます。

さて、ここ数日寝室で読んでいた本。
『奇妙な国境や境界の世界地図』(Zoran Nikolić著/松田和也訳/創元社刊)。

250ページもある本なのですが、見開き2ページが地図とその土地のキャッチコピー、次の2ページが説明文、後半からは地図と説明文がそれぞれ1ページずつという体裁ですので、取り上げている飛地は50箇所くらいで、あっと言う間に読めます。
寧ろ、ずっと読んでいた『世界のカレー料理』の方が中々読了しないのは何故だろう。
あっちは図版と説明文数行の筈なのだが。

それはさて置き、この本、そんなに目新しいものでは無くて、地図を読んでいると出て来る不可解な土地を紹介したものになります。
作者は専門の地理学者とかでは無く、本職はエネルギーエンジニアで、趣味としてこうした地図とかを見る位の人。
ただ、セルビア出身だからか、こうした飛地とかに興味を持ったような観じ。

だから、そんなに微に入り細を穿つ様な記述では無く2ページ程度での記述で収まっています。
地理好きの人からすれば、殆ど当たり前であろう土地もあって、特に目新しさがある訳では無いです。
例えば、欧州のオランダとドイツとベルギーにある歴史的な国境線とか、アフリカの人為的に作られた飛地的回廊とか、旧ソ連のナゴルノ・カラバフとか…。
また国境だけで無く、州境についても取り上げていて、だから「国境や境界」な訳。

州境とかも含めているから、どマイナーな飛地もあって、それはそれで興味深く読めるものではある。
構えて読むと拍子抜けするかも知れませんが、寝る前に頭を休めるという意味では、最適な本で有るように思えます。

流石に日本の飛地までは取り上げているわけでは無いですが。

この本で一番印象に残ったのは豪州の首都キャンベラの飛地。

何しろ、憲法で首都のあるACTは海に面していなければならないと言う条文がある為、海から150kmも離れている首都キャンベラの飛地としてニューサウスウェールズ州の半島の一部が指定されていると言うもの。

しかも、その半島全体が飛地になっているのなら兎も角、燈台のある先端部、その部分だけはニューサウスウェールズ州の飛地と言う不可解な決定が為されていて、しかしそれが法的に有効なのか無効なのか現状がさっぱり判らないと言う何とも大らかな事実。

日本でも測量し直したら島の数が相当増えたと言う事で、これをどの行政区分に組み込むかと言う話になるのかも知れませんが、豪州のような大雑把な決定は為されないでしょうね。
この辺、日本の官僚はきっちりし過ぎる位していますから。(当然交付税にも響きますからね)

奇妙な国境や境界の世界地図

奇妙な国境や境界の世界地図

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2023/01/26
  • メディア: Kindle版



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国旗・国歌の世界地図 [読書]

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今日も出勤。
で、会社で自分が使っているパソコンの交換をしていて上手く行かずにぶつくさ文句を言ってました。
今まで使っていたのは富士通だったのですが、新しいのはdynabook。
CPU性能は全く変わっておらず、メモリも増えておらず、SSDも同じ。

一方で、電力性能はというと、電源を外すと2時間でバッテリーの電力が無くなります。
富士通は5時間経っても、6時間経ってもその辺へたることは無かったのですが、相変わらずdynabookの電源周りは設計が好い加減で、CPUの性能も100%出し切ることは出来ません。
その上、バッテリーが過放電したら修理扱いになるという笑える仕様です。
正直、家用で幾ら安くてもdynabookだけは買うまいと思っていたのですが、仕様が全く変わってない。

昔はさて置き、今は富士通やNECも含めてLenovoパソコンのOEMになっている筈なのですが、富士通にしろLenovoにしろ性能がまともで堅牢さがまだあります。
しかし、Lenovoが調達した部品の中で外れの部品を組み立てたのが、dynabookのパソコンになったんじゃ無いでしょうか。
そんな感じを受けます。

キーボードもフニャフニャで、エンターキーの位置も悪く、尚且つ、タッチパッドの性能もいまいちですからね。
安物買いの銭失いとはよく言ったものです。
これを5年使わないといけないのかと思うと、机の上から落っことして故障させたくなります。

さてここ最近、『国旗・国歌の世界地図』と言う15年前の本を通勤の行き帰りに読んでいました。
当時、盛んに文春新書から出ていた『~の世界地図』シリーズの本です。

この本は2007年当時の独立国の国旗や国歌を取り上げた本です。
あれから15年以上が経過しましたが、それ以後に独立したのはスーダンから分離した南スーダンくらい、あと残っているのは大洋の島嶼部と西サハラ、それに分裂しているイエメンとエチオピアとソマリアの辺りくらいしかありません。

それでも15年で発展途上国では政体の変更があったり、内戦とかクーデターがあったりして、国旗や国歌は色々と変わっています。
欧米や日本、それに東アジアでは国旗や国歌が変わらないのは当たり前ですが、発展途上国では政権が替わる度に、あっちを弄り、こっちを弄りで国旗や国歌が変わっています。
そう言う意味では憲法も似た様なものではありますね。

そう言えば、祖父の家には立派な1930年の大百科事典が鎮座ましましておりました。
その中に掲載されているのは欧州諸国とソ連と北米、中南米諸国、アフリカはエジプトにエチオピアとリベリアと南アフリカ、オセアニアは豪州とニュージーランド、アジアではモンゴルと中華民国とタイと日本くらいでした。
残りは全て植民地でしたからね。

1950年代の地図もありましたが、この時もアフリカはピンク色(英国領土)と紫色(フランス領)で殆どが色分けされ、アジア諸国でも東南アジアを始めとして、インドやインドネシアに点々と欧米各国の植民都市が残っていました。

今やそんなものは一掃され、小さな国々がひしめき合って並んでいるので隔世の感があります。
欧州でもロシア、ユーゴスラヴィアやチェコスロヴァキアを始めとして、分離独立した国々が多数占めていますからね。
そう言えば、もう数年くらいしたら英国が分割されたりロシアが更に細分化されたりするのかしら。

一時期は統一国家が持て囃されたりしましたが、今はどうなんでしょうか。
と言うよりも、国と言うものがそもそも必要かと言う域に達している様な気もします。
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いわしバターを自分で [読書]

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ヘロヘロだった1週間がやっと終わりました。
まぁ、肝臓関係の数値が減ったのは僥倖です。

時に、オミクロン対応のワクチン接種券が昨日届きました。
何時もだったらさっさと予約して打ちに行っているのですが、今回は肝臓の数値が改善するまで少し様子見です。

ついでに寝込まないようにしないといけないですからね。
今度の3連休は遠征の予定なので、どこかでやることになるにしろ、11月に入るのかなぁなんて思ったりする。

さて、ここ数日行き帰りに読んでいた本の紹介。

個人的に小説というのは歴史小説以外読まない人なのですが、小説家が書く食に関するエッセイは好んで読んでいます。
エッセイが一番肩の力が抜ける著作に思えるのですよね。

今回読んでいたのは『いわしバターを自分で』(平松洋子著/文春文庫刊)。
この人の食のコラムというかエッセイは、週刊文春に連載されているもので、定期的に文庫本として発行されており、何冊も今までに出ています。

小説家と言えば食い意地の張っている人が多い印象ですが、この人も御多分に漏れず、美味しいものを手に入れたらそれに合うような料理をして食してみると言う、ある意味贅沢な暮らしを送っている人達です。

しかし、通常のグルメ小説とかエッセイでは無く、意外に身近な食材で作る意外な一品を取り上げるところが読者に支持されている理由なのかも知れません。

その白眉とも言える料理が、『クッキングパパ』の作家うえやまといちさんに激賞されたと言う「パセリカレー」。
合挽肉500gとパセリ25本を準備して、厚手の鍋に合挽肉を入れ、カレー粉と共に炒めた後に、微塵切りにしたパセリを加えて、水などを入れて煮込むと言う料理です。

これだと材料さえあれば(夏だと、家庭菜園でパセリなんかは幾らでも作れますねぇ)、手軽にパッパと作れますから、

勿論手間暇掛かる料理や庶民の口に中々入らない料理も取り上げていますが、酒のアテになる料理も多かったりする。
手軽で簡単、しかも美味しい料理を取り上げているのが、連載が続いている理由なのかも知れません。
と言うか、家庭料理を大きく逸脱しないのが人気だったりするのかな、と。

タイトルのいわしバターからして、オイルサーディンをただただパンに挟んだだけの料理なのに、それがとっても美味しそうに見える描写になっていますからね。
丁度、体調を崩していたときに読んでいたものであり、更に美味しそうに感じたような気がします。


いわしバターを自分で (文春文庫 ひ 20-13)

いわしバターを自分で (文春文庫 ひ 20-13)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/03/08
  • メディア: 文庫



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ニッポン秘境路線バスの旅 [読書]

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今日も出勤。
大体、3割出勤なのに、何故毎日毎日出勤なのか…と言うと、クーラーが壊れているからとしか言いようがありません。
昨日はそうでも無かったのに、今日は水がポタポタどころかザーザー落ちるような状態で、完全にドレン管が外れたか詰まっている感じです。
修理まで後2日、それまでにこちらの身体が保つかどうか。

取り敢ず、扇風機を付けて書斎に籠もっています。
で、熱中症厳重警戒水域で温度計は31度を指しています。

さてここ数日読んでいた本の紹介。
今回は久々に新しめの本で、『ニッポン秘境路線バスの旅』(風来堂編/交通新聞社新書)。
タイトルでも明らかなように、路線バスに的を絞った本になります。
路線バスの本と言えば、以前に紹介した何冊かの本になりますが、こちらは都市よりも田舎に近い場所の路線バスの紹介です。

ただ、残念なことに最近はこうした路線バスの路線もコロナ禍により、廃止が相次いでいたりします。
なので、取り上げた路線の中には、既に路線が無いものもあります。
最近、路線の廃止は規制緩和の流れを受けてかなり簡単になりましたから、実態に合っていない記述も出て来ているのは仕方ありません。

今回取り上げたのは北海道から沖縄までの各地ですが、紙幅の関係上か、或いは作者の乗車経験の偏りなのか、東北と山陰地方はほぼ全滅で、北陸も福井、石川、富山は取り上げられていません。
近畿でも大阪、京都は取り上げられていません。

また秘境路線バスと銘打ちながら、京成バスの幕張線やゆとりーとラインを取り上げたりしているのは何だかなぁと。
タイトルと全然かけ離れた路線が取り上げられていたりして、ちょっと中途半端に感じます。

他にも鉄道転換バス、狭隘路線とか悪路とか長大路線とかがあるのですが、最後の変わり種の部分が多いのが少し頂けないなと思いました。
これにゆとりーとラインとか幕張線が入るのでねぇ。

このタイトル通りにするのならば、都市部の路線はカットした方が良かったのでは無いでしょうか。
読者にすれば、読者に代わって、色んな田舎の路線バスに乗って、その体験記を追体験したいと言うつもりで買った可能性がありますから。
それが、自分の家の近くを走っている路線が急に出て来て、「これが秘境路線バスだ」と言われると、「はぁ?」という事になるのでは無いかと思ってしまいます。

切り口は良かったのでしょうが、編集がちょっと雑かなぁと言う所も気になりました。
どうせなら、路線図と共に、拠点間のバスの時刻表を掲載してもいい様な気がしましたね。
以前に読んだ同じ様な趣旨の本よりは、いまいちだったのかと言う印象でした。

ニッポン秘境路線バスの旅 (交通新聞社新書162)

ニッポン秘境路線バスの旅 (交通新聞社新書162)

  • 作者: 風来堂
  • 出版社/メーカー: 交通新聞社
  • 発売日: 2022/07/19
  • メディア: 新書



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近江の陣屋を訪ねて [読書]

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今日は朝雨が降っていたのですが、出る頃には止んで、傘を持たずに出掛けました。
路面が濡れていたので、気をつけて歩いていましたが、駅に入った階段ですってんころりんして、階段を滑り降りるという失態を…。

まぁ、服も破れず、頭も打たなくて良かったのですが、腰を思い切り打ち付けました。
ただでさえ、ヘルニアもちなのに、明日に引き摺らないことを祈ります。
雨の中、矢張り革靴で歩くのは危険ですねぇ。

さて、ここ数日通勤の行き帰りに読んでいた本の紹介。
今回は前の本と違ってかなり薄い本です。
『近江の陣屋を訪ねて』(中井均編著/サンライズ出版発行)。

簡単に書けば、近江国に存在した大名陣屋の考察です。
大名と言えば、大河ドラマや信長の野望などのゲームの影響からか、大きな城を構えていると言う印象がありますが、実際にはそうした城を構えている大名家は国主、準国主、或いは城主、城主格と言われる家だけで、江戸後期になると城主格と言っても城を構えている訳ではありません。
また、江戸時代の大名家の3分の1は無城と言って、居城を持っていません。

例えば、我が鳩谷も譜代大名が封じられたこともありました。
譜代直臣の阿部政勝は5,000石を知行し、その死後を継いだ阿部正次は、5,000石を加増されて諸侯に列し、陣屋を鳩ヶ谷に構えましたが、これも無城です。
その後阿部正次は22,000石を領して、大多喜に転封されて短期間で廃されましたが。

他に陣屋は、交代寄合と称する、大名に少し手が届かない旗本家の居所や、旗本の知行地に置かれた役所、大名の飛地に構えた役所も陣屋と称しています。
川口では関東郡代の伊奈家の赤山陣屋が前者では有名ですし、後者では井伊家の世田谷陣屋が有名です。

前置きが長くなりましたが、この本では近江にあった大名陣屋の痕跡を紹介しています。
他に近江では朽木家が交代寄合として陣屋を構えていましたが、あくまでも今回は大名家の陣屋の紹介で、市橋長勝が藩祖となる仁正寺市橋家、堀田正休を藩祖とする宮川堀田家、分部光信を藩祖とする大溝分部家の3つの陣屋について、陣屋の構造や周辺の都市建築の様子等を紹介しています。

とは言え、城に比べると資料も少なく、また、余り研究する人もいなかったり、多くが明治になって解体されたり、或いは都市開発の波に飲み込まれたりして、深掘りをする事が出来ません。
そもそも、陣屋を深く研究するにはこの令和の時代は遅すぎ、既に十分な調査が為されずに遺構が解体されたり、破壊されてしまったりして、資料が殆ど残っていません。

従って、それなりに資料が残っていたり、建築物の一部が移築などで残っていたのはこの3つの陣屋だけです。
近江には他にも陣屋が点在していましたが、それらについては軽く触れているだけでした。
つくづく、日本と言う国は歴史を大事にしない国だなぁと思ったりする。

町おこしの材料として、こうした陣屋を活用しようという動きが遅まきながら出て来たところが救いなのかも知れません。
凄く地味な研究成果を書いている本ですが、こうした陣屋が大名家居所の主流だったと考えれば、結構価値の高い建築物では無いでしょうか。

近江の陣屋を訪ねて (近江旅の本)

近江の陣屋を訪ねて (近江旅の本)

  • 出版社/メーカー: サンライズ出版
  • 発売日: 2021/05/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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