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国鉄時代の貨物列車を知ろう [読書]

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今日は在宅勤務。
御陰で、雨に降られることも無く、また電車の運転見合わせに遭遇することもありませんでした。
ついでに今日はフレックスで蒸けて、リハビリに行って来て土日は暇になったのですが、よくよく考えてみると来週土日は両日とも出勤になります。
そして、再来週土日は久々に遠征に出掛けるので、今週遠征に出なくてもと言う思いもあったりする。

しかも、残暑が厳しいし。
来週以降やっと涼しくなってきそうですけどね。
しかし、涼しくなると言う事は北風運用になるんだろうなぁ。

さて、ここ数日読んでいた本の紹介。
『国鉄時代の貨物列車を知ろう 昭和40年代の貨物輸送』(栗原景著/実業之日本社刊)
今年は日本の鉄道貨物輸送150周年と言う事でその類の本が色々と出ています。
本書もその1つですが、切り口は国鉄時代の貨物列車について。

鉄道関係の本だと主流は機関車とか百歩譲って貨車のメカニカルな視点ですが、こちらは貨物輸送の歴史に重点を置いた本です。
とは言え、150年の貨物輸送の歴史を漫然と綴ったわけでは無く、貨物輸送がピークを迎えた昭和30年代後半から日本の高度経済成長を終える昭和40年代後半までに主眼を置いています。

勿論、鉄道貨物輸送の歴史は長く、その前後の歴史も書かれていますが、新書判の本にいっぱい詰め込んでも仕方ないので、あくまでも国鉄の貨物輸送の栄枯盛衰を辿った感じになっています。

実際、貨物輸送の実情というのに余り詳しくなかったりするので、何故に鉄道貨物輸送が廃れたのかと言うのがイマイチピンと来ていませんでした。
まぁ子供の頃から旅客輸送メインの私鉄沿線で育った人間ですから、貨物列車にはそんなに思い入れが無かったわけで。
国鉄の最寄り駅も国電区間の駅だったため、旅客のみで貨物扱いが無かったし。

私が今まで思っていた貨物輸送と言うのは貨物駅で貨車に荷物を積んで、その貨車を連結して各地に運ぶと言うものでした。
(パソコンのゲームのイメージがそれですからね)

実際にこの本を読んでみると、種々雑多な貨車をつないだ鈍足の貨物列車が各駅で貨車の解結を行い、それらが近郊の貨物駅に集約され、そこで方面別に貨車の仕訳が行われて、やっと方面別の急行貨物列車が仕立てられ、次の拠点貨物駅まで輸送、そこでまた貨車の解結を行い、再び行き先別の鈍足貨物列車に仕立てられて、目的地の駅迄輸送されると言う事をしていたそうです。

貨物の増大も相俟って、昔の手法をずっと残したままで、膨大な人員と時間が食われ、送り出した貨物は何時目的地に届くか判らないと言う状況に陥っています。
その間に幹線道路網が整備され、戸口から戸口に文字通り輸送出来るトラックがいつ届くか判らない鉄道貨物に取って代わることになります。

それに対抗する為に採ったのが、新たな投資が必要となるコンテナ化では無く、既存の設備を流用したヤードの近代化という手法でした。
投資費用は抑えられるものの、トラック輸送に対抗すべき競争力は無く、かくして膨大な赤字を垂れ流す存在と化していきます。

昭和40年代に入って、遅れ馳せながら通運事業者とタッグを組んでのコンテナ輸送とトラック輸送を組合わせた近代的な輸送手段が取入れられましたが、ヤード近代化の莫大な投資が回収できず、コンテナ化で更なる投資が嵩み、その他の赤字で二進も三進も行かなくなっていきました。

他にも労使紛争や相次ぐ値上げによる客離れと言うのもあるし、親方日の丸の公共事業体である為に、民間会社のように選択と集中が出来なかったと言うのもあります。
国鉄の分割民営化は、様々な要因が重なっての出来事ですが、貨物部門の赤字も見逃すことが出来なかった訳です。

この本では最盛期の国鉄貨物の輸送実態を明らかにするとともに、それだけの規模を誇りながら、何故衰退していったのかと言うのを素人にも判りやすくきちんと解説してくれています。

また、こうした本では貨車を用いた大型貨物輸送に視点が向きがちですが、小口貨物輸送や荷物輸送、郵便輸送や専門貨物輸送、それらを運ぶ為の運賃体系と言ったニッチな部分にも目を向けていて、普段、我々が知らない世界を見せてくれたのも面白かったです。

勿論、車輌好きも入って行き易いように、巻末には機関車と代表的な貨車の解説も載っけていて、これ1冊あれば、国鉄時代の貨物輸送について理解出来る本になっているのでは無いかと思いますね。

国鉄時代の貨物列車を知ろう 昭和40年代の貨物輸送

国鉄時代の貨物列車を知ろう 昭和40年代の貨物輸送

  • 作者: 栗原 景
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2023/07/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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