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漬け物大全 [読書]

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急に涼しくなりましたね。
涼しくなったらなったで、再び眩暈が酷くなってきて、今日は寝ていようかと思ったくらい。
流石に、明後日病院なので自重しましたが。

さて、今日は緊急事態宣言以降、電車の中で読んでいた本。
最近はついついスマホでニュースを見ることが多くて、中々本に手が出ません。
脳の状態が、そんなものを受容れなくて、眠気が勝ると言うのもありましたし。
で、4ヶ月近く経てやっと読み終えました。

『漬け物大全 世界の発酵食品探訪記』(小泉武夫著/講談社学術文庫刊)
筆者は、よくテレビで見かける醸造学、発酵学の先生で、この本では筆者の蘊蓄がふんだんに披露されているものになります。
元々は平凡社新書から発行されていた本を文庫化したものです。

漬け物と言えば、「香の物」、あるいは「御香々」などと呼んで、一般には野菜を糠漬けにしたものが代表的です。
私は、今も昔も甘味のある沢庵漬けが結構好きで、子供の頃はこれが出ると、一切れを口に含んでずっとしゃぶっていた子供でした。
…いや、今と違って甘味に飢えていたと言うのもありますし、うちで漬けた糠漬けはしょっぱいだけで美味しくないと言うのもある。

広辞苑によれば、漬け物とはこうした野菜の糠漬けの事を指すと書いてありますが、発酵させるものは糠だけではありません。

世界には、様々な素材を、様々なもので発酵させて食べる文化があります。
それは野菜に限らず、肉であったり、魚であったり、茸類だったり。
発酵を促すものは、日本では大体が糠か麹ですが、元々の発酵の歴史で始められたものと考えられているのが、乳酸発酵です。
昔の人達は、冷蔵が出来なかった為、腐りやすい野菜類を保存するため、また、日持ちしない肉や魚などの生ものを保存するため、更には冬には採れない野菜を摂取して、ビタミン類を補給するために生活の知恵で、試行錯誤しながら様々な漬け物を作っていきました。

日本は漬け物王国とも言うべき国で、べったら漬けや沢庵漬け、壺漬けなど根菜類を漬けたものはよく食べられていますし、梅干しも広義の意味では漬け物になるそうです。
また、雪国では、野沢菜漬け、赤蕪漬けと言ったものを夏の間に漬けて、冬のビタミン補給に利用しました。
野菜だけで無く、魚の漬け物と言うべきものも多く、代表的なのが近江の鮒鮨などの馴鮨です。
他にも長崎名産のからすみ、北陸のへしこ、伊豆諸島のくさやなども漬け物に分類するらしい。

海外に目を転じてみると、朝鮮半島にはキムチがありますし、中国には地域ごとに漬け物がありますが、日本で一番有名なのは搾菜でしょうか。
暑い東南アジアでも馴鮨的な魚の塩漬を野菜炒めの具にしたりしています。
そう言えば、彼の地ではナンプラーなどの魚醤も有名ですね。

乾燥している西アジアや高山地帯のインド亜大陸地域にはそうしたものが無いみたいですが、それでもネパールやブータンなどには乳酸発酵の漬け物があるそうです。
アフリカは筆者が確認したのは、アフリカのマダガスカル島くらいですが、他にも有るのでは無いでしょうか。
そう言えば、西アジアには椰子の実を発酵させたものがあったような気がしますが。

欧州ではピクルスとザウアークラウトが有名ですし、シュールストレミングなんて言うのも魚の漬け物と言えなくは無いらしい。
こちらでは根菜よりは葉物、或いは魚が中心です。
所変われば品変わると言うべきなのでしょうか。

この本、最初は学術的な本と言う感じでかなり取っつきにくく思えるのですが、途中から脱線してきて、筆者の酒の肴の話になって行っているのはご愛敬。
それでも、文化人類学的な考察や発酵学に関する豆知識を得ることも出来る本になっています。
まぁ、深くこの世界に首を突っ込みたい場合は、薄い文庫本では無くて専門書の方がいいかも知れませんが、発酵や漬け物に興味のある人は取っ掛りとして最適な本では無いかと思います。

漬け物大全 世界の発酵食品探訪記 (講談社学術文庫)

漬け物大全 世界の発酵食品探訪記 (講談社学術文庫)

  • 作者: 小泉 武夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/10/11
  • メディア: 文庫


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