SSブログ

ナチ略奪美術品を救え [読書]

UAE_B777-300ER_EQL_0001.jpg

今日は在宅勤務。
正直、ずっと出ずっぱりなので、来週からは在宅勤務にしても良いくらいですが、流石にそうも行かないのが宮仕えの辛いところです。
それでも10日の出社は熟したのでミッションコンプリートではあるのですが。

で、18時過ぎまで仕事して、速攻で処方薬局までひとっ走り。
別の薬局が休みだったので戦々恐々としていたのですが、行きつけの薬局はやっていました。
明日で処方箋の期限が切れるのですが、明日は周囲への挨拶回り、その後はライブ参戦のために後楽園に行くことになっていますから、時間が遅れると処方箋の期限が切れてしまいます。
錠数が結構多いので、再度貰いに行くのも面倒だったので、さっさと行ってきて良かったです。

てな訳で、ここ数ヶ月、トイレの中で読んでいた本の紹介。
トイレの中で読んでいた本は、かなり分厚い本が多いです。
それこそ事典とかね。

今回紹介するのは『ナチ略奪美術品を救え 特殊部隊モニュメンツメンの戦争』(Robert M. Edsel著/高儀進訳/白水社刊)で10年前に刊行された本。

今般のウクライナ侵攻でもそうですが、侵攻を受けた地域では防衛側は敵側に寸土たりとも奪われまいと建物に立て籠り、侵攻側は味方の人的損害をなるべく少なくするべく、侵攻に邪魔な建物を破壊して回ります。
それが歴史的建造物であろうが、その中に貴重な芸術作品が入っていようがお構いなしです。

また、侵攻側は領土侵略後、自国の優位さを敵国に知らしめるために、敵国が大事にしていた芸術作品を自国に持ち帰ることも良くします。
近世とかの戦争でも、そういった略奪行為が多数行われ、数多の芸術作品が侵略者に奪われました。

第2次世界大戦でも同じで、特にドイツではヒトラーの芸術的傾倒とゲーリングの成金趣味によって、欧州各占領国からの美術品略奪が公然と行われます。
また、逮捕し、収容所に送り込んだユダヤ人達の財産も奪い去って自分達のものにしました。
それらの作品群は専用の貨車などで或いはリンツの帝室美術館予定地近くに運ばれたり、ゲーリングやヒトラーなどの幹部の私邸に運び込まれていました。

勿論、こうした行為に表立って反論するのは自殺行為です。
しかし、占領国の美術関係者の一部は、自分達から奪い取られた作品がどの様な経路を辿って、何処に運ばれたのかと言う記録を、占領軍の目をかいくぐって残していました。

戦争では敵味方とも、民間の被害に全く頓着しません。
とは言え、戦場から遠く離れた米国では、美術関係者を中心に、占領国の美術品やユダヤ人から没収した美術品の在処について非常に関心を呼んでいました。
そこで、米軍は参戦と同時にそうした歴史的建造物、美術品などを保護するためのセクションを作ります。

最初はアフリカ戦線で、ローマ帝国やカルタゴ時代の遺跡を保護する作業に携わり、イタリアでもローマ帝国時代の史跡を救う事に努力を払いました。
但し、モンテ・カッシーノ寺院の破壊はこの地域の彼等の活動に汚点を残しました。

その後もノルマンディーで連合国軍の前線と共に進み、歴史的建造物の保護、芸術作品の保護などの活動を進めています。
パリに着くと、ルーブルの関係者と共に、フランスから略奪された美術品の行方を追う活動も加わり、それはパットン将軍の第3軍と共にオーストリアの岩塩鉱山に隠された膨大な財宝、金塊、公文書、美術品に辿り着くまで続きました。

こうした活動は通常戦線が落ち着いた時に行うと考えられがちですが、彼等の活動は直接戦闘しないまでも、かなり前線に近い場所で行われ、60名の構成員の内、2名の戦死者を出しています。
戦争が終わっても、美術品を隠し場所から発見する、或いは隠し場所から運び出す仕事が加わり、1946年までこの組織は維持されていました。

しかし、余り表舞台に立つことは無く、戦後、美術界の大立者や名門美術館館長を務めた構成員の大部分は、自らの功績を誇ること無く、静かに人生を終えています。

その終幕の頃に偶然このエピソードを知ったのがこのEdsel氏で、彼は実業界を引退して、この活動の顕彰に打ち込み、結果として、多くの人々を日の光の下に導きました。
21世紀になってやっと米国議会も彼等の活動を称えた訳です。

皮肉にも、同じ時期に米軍はイラクに侵攻します。
その時、バグダッドにあったメソポタミア文明の遺物の略奪に対して、米軍は手を拱いて見ていたと言います。
彼等モニュメンツメンにとっては、如何ばかりの思いだったか。

更に、今般のロシアによるウクライナ侵攻。
正に歴史は繰返すと言うべきなのかも知れません。
第2次世界大戦よりも人類は退化しているのでは無いか、そんな思いをこの本は訴えかけてきます。

ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争

ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争

  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2010/12/21
  • メディア: 単行本



nice!(12) 
共通テーマ:日記・雑感