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米軍医が見た占領下京都の600日 [読書]

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今日は目が覚めたら9時前。
慌てて起きて、朝飯掻き込んで、在宅勤務開始。
朝のリーダー会までにデータを集めなければならず、焦りまくりで何とか間に合いました。
そして、リーダー会が長引いて技術会社との打合せに遅れ、相手から呼び出される始末。
後は色々と雑務やっていたら、あっと言う間にお昼で、しかし、仕事のけりが付かないので延長戦。
一体何のために午後半休にしたのか分かりません。
本来なら、今日は1日完全休養で、良い天気だったので成田に行こうと思っていたのですが。

結局、完全休養にならず、しょうが無いから何時もの様にCPAPの確認に出掛けたのですが、インフルエンザワクチンの予防注射をしに来ている人が多く居て、結局かなり待たされたため、鳩ヶ谷に帰ってきたら17時半。
処方薬を貰って、リハビリに駆け込んだのですが、「もう少し早ければねぇ」と言われ、スゴスゴと処方薬を貰っただけで退散しました。

それにしても、川口だと10月1日からお年寄りが中心、26日以降は基礎疾患のある人、子供、医療従事者となっているのに、東京だと誰でもインフルエンザワクチンの接種が可能なんですね。
この格差、どうなっているのでしょう。
取り敢ず、予約が少なくてワクチンが余っていたので、26日以降の接種が出来る様になりましたが。

さて、ここ最近トイレの中で読んでいた本。
ここでは、結構分厚い本を持ち込んでいる事が多いです。
細菌がどうの、ウィルスがどうのとは言わない。
日常的に細菌と共棲しているわけですから。

それはさて置き、『米軍医が見た占領下京都の600日』(二至村菁著/藤原書店刊)。
珍しい苗字なので覚えていたのですが、中公新書の『エキリ物語』を書いた方ですね。
理学の勉強をされていたのに、医学史の方に進んだという変わり種の人(と言ったら失礼か)です。

5年前に表紙に米軍が写したと思しきカラー写真があったので、興味を持って買った本。
口絵にもカラー写真が掲載されていたので、てっきり軍医さんが撮影した写真とそれに纏わる思い出を書いた本なのかな、と思ったのですが、実際に読んでみると全然違いました。

GHQの医療責任者として1947~49年に京都に赴任した25歳の軍医J.D.グリスマンの手紙と彼が撮影した写真が縦軸にすっと入っているのですが、これは狂言回し的な役割で、実際にはGHQの民政局の医療部門と京都府庁が行った、様々な医療行政についての話が書かれています。

占領史と言えば、殆どは東京のGHQ内部と日本政府とのせめぎ合いが話の中心になっていて、地方の占領行政については殆ど取り上げられていません。
最近になって、やっと光が当たってきた分野では無いでしょうか。

この本では、最初にグリスマン軍医が出会った人々を取り上げています。
京都に来てからの身の回りの世界、例えば、占領行政を手伝う日本人雇傭者としての通訳や秘書、軍医の身の回りの世話をするメイドさん、軍医が良く行くPXの店員さんの話から始まって、一緒に仕事をする京都府庁のスタッフとの出会いと交流が中心となります。

読み進めるに従って、グリスマン軍医が出会う自軍の理不尽さに対する批判、時にはそれが軍司令官に対するものもあったりして。
意外にも、米軍は完全な上意下達の世界では無く、それが正当な理由であれば、上司である司令官に対しても意見具申が出来る組織なんだなぁと思ったり。

そして、日本の医療行政が如何にこの時期遅れていたか、その遅れをどうやってGHQが挽回させようとしていたかが描かれていきます。
看護婦の地位一つとっても、未だにそうですが、医者に比べると低い地位に置かれていますから、それが戦前からの体制では更にきつかった訳で。
それを如何に止めさせて、民主的な病院運営をさせようと奮闘している軍医たちとその命令に応えて日本の医療を向上させようと頑張る京都府庁の医療部門の人達の話に移っていきます。
その中には、刀折れ矢尽きて、傷心を抱えて日本を去ったスタッフもいました。

一方、光があれば影もあり、京都府は北との貿易港であった舞鶴を抱えていました。
戦後、朝鮮半島から帰還した引揚者の港でもあり、シベリア抑留から帰還した人達が最初に踏みしめた国土でもありました。

朝鮮半島から命からがら帰還した引揚者の中には、望まぬ妊娠をしている人もいて、「日本人の純血を守るため」米本国に知らせない状態で密かに堕胎手術が行われたと言う事実、抑留帰還者を温かく出迎え、故郷までの帰還を支援した学生達の話などが取り上げられています。

更に占領軍を悩ませた性病の蔓延、ベビーブームの到来(米軍が「生きた兵器」と呼んだ)と産児制限、ジフテリアを予防するためのワクチンが汚染され、何人もの死者が出た事件(日本は何度もこの手の薬禍を引き起こしてますね)、共産党の伸張とゼネストの話、老人福祉行政、ハンセン病の外来治療、密輸入され、押収されたストレプトマイシンを親しくなっていた神戸のMP(実は軍医は日本人と親しくなり過ぎるとして要注意人物となっていたが、MPとはその御陰でかなり親しくなっていた)から横流しして貰って、京都の結核患者に投与した話などなど、裏のエピソードが盛り沢山です。

また、作者の眼差しは、両親にも当てられます。
父親は京大の研究者ですが、戦時中にあの731部隊に派遣されていました。
今回の著書が御蔵入りしそうだったのは、このエピソードがあった為です。
確かに、731部隊の話は枚挙に暇がありませんが、その中で、ややこしい話に首を突っ込まず、自分独自の路線を貫いた人もいた事を知って欲しいと描いたものです。
これは読んで判断して欲しいと思います。

正直、予想外に重厚でかつ読み応えのある本でした。

米軍医が見た占領下京都の600日

米軍医が見た占領下京都の600日

  • 作者: 二至村 菁
  • 出版社/メーカー: 藤原書店
  • 発売日: 2015/09/26
  • メディア: 単行本


タグ:日記 雑記 読書
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