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ふたつのドイツ国鉄 [読書]

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今日も出勤。
最近は電車に不慣れな新入社員が多くなったからか、電車がかなり遅れるようになりました。
1ヶ月くらいはこの調子でしょうかねぇ。
で、今日は帰りに雨に降られるかとハラハラしていたのですが、駅に着いた途端に雨が止んだみたいでラッキーでした。
時間通りに着いていたらどうなっていたか判りません。

しかし、今日は花粉がヤバかったです。
まぁ、花粉なのか黄砂なのかが判断付かないのですが、目が痒くて、かと言って目を擦りすぎると、まためばちこ(結膜炎)が出来てしまうので、なるだけ触らないように、余りに痒ければ目薬を注すと言うので乗り切りました。

ただ、目薬を注すのは相変わらず苦手で、全部流れてしまうのが玉に瑕です。

さて、今日は通勤で読んでいた本の紹介。
『ふたつのドイツ国鉄 東西分断と長い戦後の物語 」(鴋澤歩著/NTT出版刊)。

一言で言ってしまえば、戦後ドイツの国有鉄道経営史です。
第2次世界大戦で敗北したドイツは英米仏ソの4ヶ国に分割占領されます。
大戦では国内の鉄道網は連合軍の空爆や砲撃に晒され、かなり破壊されました。

英米仏の3ヶ国占領地のうち、仏占領地を除く2ヶ国の占領地では輸送手段の復興として、いち早く国鉄当局の動きが立ち上がり、当初は賠償を優先に考えていた仏占領地でも冷戦が深まるにつれて、英米に歩調を合わせて復興に重きを置くようになりました。

一方、ソ連占領地では復興よりも賠償が優先され、占領地では線路や車輌、設備が引き剥がされソ連に持ち去られていきました。
このため、ただでさえボロボロだった東の鉄道網は中々復興できずにいます。

この本では西ドイツ国鉄と東ドイツ国鉄の2者を対比しつつ、その特徴とか成長過程、それらが行われた時代背景などを述べたものになります。

しかし、西ドイツの国鉄については1950年代から60年代頃までは詳述されていますが、それ以降の低迷期についてはかなり等閑な印象で、東ドイツ国鉄についても全国的な経営政策や労働政策、更に党との関係については、1960年代までの段階までかなり詳しい記述が見られますが、1970年代以降の低迷期や1980年代の東ドイツ滅亡までの過程、特に共産主義国家特有の中央集権政策と州の地域主義との鉄道整備についてのせめぎ合い(特にベルリン対ザクセンなどの工業地帯の綱引きなど)については余り触れられていません。
多分叢書サイズの本で全部を纏めるのは恐らく難しかったのでは無いかなと思います。

一方でこの本の大部を占めるのは、ベルリンの鉄道、特にSバーンについての経営史です。
ベルリンは特殊な地域で、東ドイツ崩壊まで4ヶ国の共同占領下にある都市と言う位置づけでした。
勿論、東ドイツの首都でもありましたが。

周囲をソ連占領地に囲まれているため、鉄道については東側が主導権を握っており、Sバーンと呼ばれる都市鉄道は西ベルリンにも乗り入れていました。
そして西ベルリンには駅もあり、駅員や修繕工場の労働者など西ベルリンに居住しながらも東ドイツの鉄道員となっていた人達の存在があったりします。

西ベルリンと言う資本主義のショールームのど真ん中に住んでいながら、生活水準の劣る東ドイツ国鉄の職員というのがかなり特殊な地位です。
ベルリンの壁が作られても、不満を持ちながらも彼等はそのまま勤務し続けています。

各時代の彼等に対する労務政策や東ドイツ国鉄が行った西側でのSバーンの経営施策などがこの本でも興味深いところです。
と言うか寧ろ、ドイツ全体に焦点を当てるより、Sバーンに特化した方が良かったように思えますね。

まぁ、時代背景を理解する上での東西ドイツ国鉄の対比という意味でこれらの2つの国鉄を論じたのかも知れませんが。

作者が経済学者である為、車輌の写真や華々しい技術的側面の話は殆ど出て来ませんが、冷戦の裏面史と言う部分に興味のある方は読んでも損は無いと思います。

ふたつのドイツ国鉄 ―東西分断と長い戦後の物語 (人文知の復興 2)

ふたつのドイツ国鉄 ―東西分断と長い戦後の物語 (人文知の復興 2)

  • 作者: 鴋澤 歩
  • 出版社/メーカー: NTT出版
  • 発売日: 2021/03/25
  • メディア: 単行本



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