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深夜航路 午前0時からはじまる船旅 [読書]

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昨日、インフルの予防接種をして来たのですが、今朝起きたら身体が重い。
季節の変わり目と言う事で風邪を引いたようです。
ここで、抗生物質を使ってしまうと折角の抗体が作られなくなってしまうのでは無いか、と思い、葛根湯でお茶を濁しています。

さて、ここ最近読んでいた本について。

『深夜航路 午前0時からはじまる船旅』(清水浩史著/草思社刊)

文字通り、日付が変わった頃に出港して、夜を徹して目的地に到着する船便の旅行記で、北は函館から南は鹿児島までの各地を巡ってます。
こうした船便の需要というのは、圧倒的に、各地の物流を担うトラックを中心とした貨物便です。
しかし、作者はトラックや自家用車、バイクなどでは無く、あくまでも公共交通機関を使った徒歩客の視点での旅行記に拘ります。

従って、短距離の海峡連絡船の場合、深夜に出港して、夜明け前に到着することも屡々。
自動車を持っていれば、そのまま次の目的地に行く事が出来ますが、徒歩なので公共交通機関が動き出すまで待つ事になります。
ただ、地方では都会と異なり人情がまだ残っています。
事務所のスタッフに便宜を図って貰い、待合室を開放して貰ったり、場合によっては出港までの待ち時間、船内で過ごすことが出来る様になっていたりと満更捨てたものでは有りません。

しかし、会社で仕事してから、定時退社して目的地まで夜の新幹線やバスに乗り、出港地に到着、目的の船に乗り、彼方此方を見て回ったり、デッキに出て夜の海の景色を堪能したりしていると寝る時間が余り有りません。
それが短距離航路だと深夜0時に出て深夜3時とか4時に到着すると言う旅程の繰り返しです。

何でそこまでして難行苦行を続けねばならないのか、この辺は先日の下川さんの著書にも通じるものがあります。
一つはそこに航路があるからだ、なのでしょうし、あるいは光害に汚染された陸地と異なり、夜の海と言うのは漆黒の闇が拡がっていたり、本当の星空が見えたりする、それは人間が元来持っていた自然に対する畏怖を再確認する事が出来るから、と言うのがあるのかも知れません。

また、船旅と言うのは、長距離ドライバーなど物流業務に携わっている人で無い限り、完全に非日常の世界です。
都会の喧噪を離れ、何もかも忘れてリセットする旅も乙なものです。

因みにこの本、メインは深夜の船旅なのですが、それだけでは芸がないと思ったのか、それぞれオプショナルツアー的な形で、到着地近辺の観光ガイドにも載っていない場所を旅するルポも掲載しています。
ただ、あくまでも海に関係する場所です。
例えば、青森〜函館の航路のオプショナルツアーは、函館にあった消滅集落を訪ねる旅、神戸〜新居浜航路のオプショナルツアーは島々を巡る小さな渡し船の旅、宿毛〜佐伯航路のオプショナルツアーは、無人島の燈台である水ノ子島へ渡る旅、と言った具合。

個人的には最後に掲載された奄美大島から鹿児島に向う航路に乗ってみたいなぁと思いましたね。
非日常を堪能して、机上でも旅に出られる気分になるにはこの作品はおすすめです。


深夜航路: 午前0時からはじまる船旅
草思社
清水 浩史

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