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ヨーロッパ国際列車追跡乗車記 [読書]

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こうも毎日毎日35度超えが続くと、好い加減バテてきます。
毎日会社に行ってはいるのですが、2日目にしてバテてきました。
折角金曜は休みなのですが、猛暑日に近い気温の予報。
とてもじゃないけど出掛ける気力が起きません。
北の方に行こうと思っても、北の方もかなりの猛暑ですからね。

折角の3連休なのですが、まぁ9月は3連休が後1回あるし、土日潰れるとかもあるので(ぉ。
そんな撮影欲が薄れている今日この頃に、一服の清涼剤となる本の話題。

『ヨーロッパ国際列車追跡乗車記』(南正時著/天夢人刊)。
今は撮り鉄と言えばかなり肩身が狭いですが、プロの鉄道写真家は人々の中に上手く溶け込んで、人間を切り取りつつも鉄道を撮影すると言う工夫が凄く旨いなぁと思います。
この人も鉄道写真家の草分け的存在ですが、元々大塚康生さんと同じ職場にいて、その影響を受けて鉄道にのめり込んだらしい。

この人が異色なのは、通常の鉄道写真家は国内の鉄道を被写体にするのですが、当時は海外旅行が珍しかった時代に海外に出掛けて、欧州を中心とした鉄道を撮影していた事。

この写真を売り込んだ国内の鉄道雑誌からは総スカンを食らうのですが、偶々その写真を評価してくれた人がいて、新聞社系のグラフ誌(多分アサヒグラフだと思う)に海外の鉄道写真を掲載したところ、そこから思わぬ世界が拡がり、ドラえもんと共演したり、武田鉄矢主演の映画になったりと、売れっ子として活躍をしています。

この本は、その切っ掛けとなった欧州の特にTEEを中心にした作品群です。
今でこそ、時速200km以上で各国を結ぶ高速鉄道網が張り巡らされていますが、まだ技術が発展途上だった時期、大出力の気動車または電気機関車をプッシュプル式に連結して、フランスと西ドイツを中心にベネルクス3国、スイス、オーストリア、イタリア、スペインと言った西欧の津々浦々まで走っていた特急網がTEEです。

現在の高速鉄道網は、航空機に対抗する移動手段という趣で、旅情も糞もありませんが(そう言う意味では日本の新幹線も良い勝負)、当時は時間を掛けて移動すると言うのを是としていて、その時間をどれだけ有意義に過ごすかという事に重きを置いていました。
だから、食堂車の連結は当たり前でしたし、バーやブティックすら利用出来る車輌が運行されていましたし、夜行列車だと寝台車も連結されていました。

この本では、自身が撮影した各国のTEEを紹介しつつ、その車内設備や乗務員との対話、乗客との対話が聞こえるような写真を掲載しています。
今ではテロ対策で、乗務員との対話すら覚束無い(これもまた味気ない)のですが、当時は人々に余裕があったのか、様々な国々で、奇妙な東洋人とのコミュニケーションを楽しんでいたりするのが写真で伺えるようです。

当然、自身も多分若気の至りだと思いますが、食堂車では正装と言うドレスコードがあるとか言って、羽織袴でカメラに収まったりしています。
まだ日本人が彼方此方に出没していない時代、中国人との違いを見せるために色々と工夫していたのでは無いでしょうか。

車内風景や車窓だけで無く、勿論、この本は旅鉄ブックスの1冊ですからちゃんとした車輌の写真も掲載されています。
但し、現在と違って銀塩カメラですから撮影は一瞬、そして時間には限りが有るので、無念の涙を呑んで見送ったTEEもあった様です。

それでも、有名どころのTEEはちゃんと抑えていますし、時刻表なども掲載していて、1980年代初頭のまだ欧州旅行が非日常的だった時代の風景をちゃんと伝えているのはさすが写真家だなぁと思いましたね。
また、TEEだけで無く、欧州を走っていた国際列車も一通り抑えていますから、読み本としても面白かったです。

こんなに隆盛を誇ったTEEも、その後TGVやICEなどの高速列車に取って代わられていきますが、その終焉もちゃんと残しているのも良かったです。
大体こうした車輌の写真と言うのは、旬が過ぎれば見過ごされたりするものですから。

個人的には、子供の頃、図鑑とかで見ていた鉄道を写真でも見られたのが嬉しかったですね。

ヨーロッパ国際列車追跡乗車記 (旅鉄BOOKS069)

ヨーロッパ国際列車追跡乗車記 (旅鉄BOOKS069)

  • 作者: 南 正時
  • 出版社/メーカー: 天夢人
  • 発売日: 2023/07/19
  • メディア: 単行本


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