未成線の謎 [読書]
今日も出社。
取り敢ず、明日は休みなので、手順書2つをとっとと書いて出そうと思ったのですが、1つを書いたところで力尽きました。
日曜日の作業待ちの時につらつらと書こうかなと思ったりする。
それにしても、ユーザ目線とシステム屋目線だと大分違うなぁなんて思ったりして。
手順書を纏めて出せば楽なのと、分割するとどれを使うか判らなくなるIT介護難民向けに出来るだけ手順書を纏めようと作っているのですが、逆に纏めるとIT介護難民は判らなくなるらしい。
さじ加減が難しいなぁと思い知らされました。
ふぅ。
さて、ここ最近通勤の行き帰りに読んでいた本の紹介。
『開封!鉄道秘史 未成線の謎』(森口誠之著/河出書房新社刊)。
鉄道趣味の範囲でも、廃線巡りと言うジャンルがありますが、更にそこから病膏肓に入って、開業していない鉄道について書かれた本です。
その昔、宮脇俊三さんの著書に、『夢の山岳鉄道』と言うのがあったのですが、それと同じ類。
まぁ、謂わば宮脇俊三さんがジャンルを切り拓いたと言っても過言ではないのかも知れません。
古くは私鉄出願が続いた昭和初期にこの類の未成線が大量に出ました。
地図の上に線を引いて、経済上の裏付けがある程度あれば鉄道省に申請を出して免許を受けることが出来ます。
特に政友会の時には「建主改従」と言う政策で、鉄道建設を利権として扱ったため、大量に免許が交付されたりしていました。
山師がこう言った線の免許を取得して、他の鉄道会社に売りつけたり、既存の鉄道会社がライバル他社の進出を防ぐ為に防衛的に免許を取得したり、逆に鉄道会社がライバル鉄道会社の金城湯池に殴り込むために免許を取得したりと形態は様々。
戦前は昭和初期がピークで、免許が濫発されたのですが、大恐慌の御陰で資金が集まらずに着工に至らず、免許の期限が切れるケースが続出しました。
こう言った紙上の鉄道と言う意味での「幻の鉄道」。
また、戦時中に軍の要望で建設が推進されたものの、戦争後半に顕著となった物資不足で肝心の資材が集まらず、竹筋コンクリートの架橋とかを構築したものの、レールは不要不急と言う事で、他の線区に転用され、戦後は輸送密度が足りない為にそれ以上の建設が為されず、「幻の鉄道」となったもの。
戦後になると道路の貧弱さから一時的に鉄道が見直され、また保守政党の権力の源泉として日本列島津々浦々に鉄道の計画が為され、国鉄に建設を押し付ける、国鉄が赤字で二進も三進も行かなくなると、その計画を遂行すべく、鉄道建設公団と言う公団を造り、そこを主体として高規格路線を建設しようとしたものの、オイルショック以降の不況と国鉄の大赤字で輸送の引き受け手が無くなり、国鉄の分割民営化を前に工事を中止し、「幻の鉄道」となったもの。
この本では大別してこのような時代背景で発生した「幻の鉄道」を取り上げています。
史料が残っているのは、ある程度計画されて建設に着手しようというものばかりなので、他の本でも取り上げられていますが、最近は入手困難だし、現在はどんな状態なのかと言う現状についても触れているので、その視点は貴重だなと思ったりする。
戦前なんかの鉄道にありがちですが、地図に線だけ引いて、免許を取得する山師パターンのケースなんかはその後の目論見書もなかったりするので、史料が極端に少なかったりしますからね。
戦前や戦時中の建設途中のものは自然に帰りつつある訳ですが、鉄建公団が手がけたものは頑丈な構築物で、地域のお荷物になってしまっているものも有るようです。
中には上手に利用している地区もあるのですが、寧ろそんなのは少数派です。
確かに都市部なんかでは、この路線が開業していればその地域の交通地図が大きく変わったかもしれないという鉄道もありますが…。
まあそうした路線が開業したら、と妄想するのも面白いかも知れません。
残念ながら、富士登山鉄道は取り上げられていませんでしたけどね。