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コーヒーと日本人の文化誌 [読書]

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今日は在宅勤務。
そして、10時から17時までみっちり会議。
間、昼休み以外トイレに行くことも出来やしません。
出社してたら完全に死んでるところでした。

さて、そんなこんなで通勤の行き帰りで読んでいた本の紹介。
『コーヒーと日本人の文化誌 世界最高のコーヒーが生まれる場所』(メリー・ホワイト著/有泉芙実代訳/創元社刊)。

昨日、我が家のインスタントコーヒー事情を紹介したのですが、実はこれの枕に書こうと思ってたものです。
この本は、文化人類学の観点から、外国の飲み物であるコーヒーと日本人との係わりを書いた本です。
5年前に出版されたものの、直ぐに絶版になっており、このほど復刊したもの。
そして復刊に際しては、出版時から時間が経過しているので、新たな章を設けて、最近の事情を追加していますので、改訂新版としての扱いです。

日本ではスタバとかタリーズコーヒーとか色々な米国資本のコーヒーチェーンが進出しており、そこに入って、オリジナルのメニューを飲むのがお洒落でインスタ映えすると言う事で人気があるのですが、意外なのは、その源流というのは日本のコーヒーショップ、所謂「喫茶店」と呼ばれる店だったりします。

実際、ファッション業界の中心がフランスやイタリアであるが如く、日本のコーヒー業界と言うのが世界のコーヒー業界の中心と言っても過言では無い位、世界に影響を与えているのです。
ファッション業界の場合は、最終製品である服飾品にのみ視線が行きがちで、中間製品や原材料については余り焦点が当たらないのですが、コーヒーに関しては生豆の生産段階から熟成、焙煎、そして豆を挽いて粉にし、カップに注いで客に提供するまで、そのコーヒーを淹れるために使う道具類、更にその客が楽しむ空間まで、全ての段階で日本が世界の中心にいるのです。

勿論、豆の生産は栽培可能な地域が限られていますから、日本では余り(確か八丈島とか南西諸島くらい)生産が出来るものでは有りませんが、先日触れたイタリア料理が海外で発展し、自国に帰ってきたように、明治時代に日本から中南米に移民した人々がコーヒー農園を経営し、自社製品の市場を拡大するために母国でコーヒーを広めようとしたのがコーヒー文化が生まれた切っ掛けの一つでした。

ただ、日本人とコーヒーとの係わりはかなり古くて、江戸時代にオランダ経由で、特に蘭印で栽培されたコーヒーが日本に多く輸入され、幕末にはコーヒー豆を挽いたものを砂糖で包んだお菓子が日本国中に流通していたそうです。

そんな素地があったからか、コーヒーは忌避されること無く、コーヒーと言う飲み物は日本人に受容され、更にブラジルなどの中南米から移民たちが母国に安い価格(時には無料)でコーヒーを供給したが故に、コーヒーを飲むと言う習慣が日本人の間に定着し、茶店をモダナイズした喫茶店という営業形態の店がコーヒーを提供する為に誕生した訳です。

このコーヒーを提供する喫茶店というのは明治に誕生しましたが、最初は洋風文化の模倣から始まり、日本人の感性によりローカライズされて様々な枝葉に分かれていきます。
例えば、地域の人達の交流の場となる様な純喫茶とか、欧米のカフェの様に談論風発の政治活動家が多く居た店や芸術家が集うサロン的な店、コーヒーよりも酒を提供する風俗店に近いカフェ・バー、コーヒーを提供するだけで無く音楽を聴かせる付加価値を持つ音楽喫茶、聞くだけで無く自ら歌う歌声喫茶などなど、様々な業態に変化していきます。

このように著者は1963年の初来日以来、フィールドワークを通じて日本の喫茶店文化とその周囲のコーヒー文化を研究し、日本人とコーヒーとの係わりを描き出しています。
この研究は現在も続き、来日する都度、新しい喫茶店に入って新しい文化の誕生に触れているそうです。
正に飽くなき探究心の塊だなぁと思います。

それにしても、日本がコーヒーの中心になっているとは驚きましたし、そのコーヒーは江戸期から此の方、日本で親しまれていた飲み物だったとは夢想だにしませんでした。
意外に日本が世界に誇れる製品なのだなぁと、認識を新たにしましたね。

そろそろ、ちゃんとした喫茶店で美味しいコーヒーを飲みたくなりました。
そう言えば、鳩ヶ谷にはそうした喫茶店をあまり見ない気がしますね。
単に私の探究心が足りないだけかも知れませんが。

改訂新版 コーヒーと日本人の文化誌: 世界最高のコーヒーが生まれる場所

改訂新版 コーヒーと日本人の文化誌: 世界最高のコーヒーが生まれる場所

  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2023/08/22
  • メディア: 単行本


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