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世界「民族」全史 [読書]

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今朝は流石に寒かったのですが、まだ大丈夫と頑張って何とか起きて仕事に行きました。
とうとうハーフコートを出しましたが、行きはちょっと暑かったです。
しかし、帰りは結構寒かった。
やっぱり少しずつでも季節が進んでいるのですね。

さて、昨日書いていた書評。
余り乗り気ではなかったので、Bing Chatが作成したものを貼付けようかなぁなんて思っていたのですが、その文章を見るとやっぱり同じ事を思った人がいたようでした。
それ以上に、この本に好意的な人が多かったのは意外。
てな訳で、『世界「民族」全史 衝突と融合の人類5000年史』(宇山卓栄著/日本実業出版社刊)の話を書く。

初っ端から書いておきますが、かなり今回は辛口です。

こうした本が学術書として世界史の書棚に置かれているのが、日本の学問の衰退だなぁなんて思ってしまいました。
好意的な書評をしている人が密林なんかでは多かったのですが、この辺はライトユーザーには受けるんだろうなと思ったりする。

海外の文献なんかを読むと、膨大な数の原註、そして出典の多さに驚きます。
巻末には50ページくらい延々と出典とか原註が書かれている事もあったりします。
大体それも一次資料に当たって書いているケースが多い。
或いは文化人類学的なものだと、微に入り細に入りフィールドワークを行い、そのフィールドワークの結果と先人の文献を比較検討して、自分の考えを導き出すような本が多いです。

一次資料を読み込んだ場合、それを客観的に評価する、例えばとある街の近世の産業構造を述べる場合でも、その町を統治する官僚が何人、農家が何軒あって、商店が何軒、粉を挽く風車が何台有って…みたいな、資料を読み込んだ上でかなり具体的な数値を出して証明をしています。
それを否定する場合でも、客観的証拠を出して否定する形の記述が多い。

まぁ、此処まで書いたら、この本のレベルが判ると思うのですが、この本は正直、「ボクの考えた民族史」でしかありません。
客観的に見せるような形で、遺伝子レベルがどうとかとか書いていますが、どの文献からの出典かが全く書かれていませんし、サンプル数がどれくらいあってそれが信頼に足る数値なのかどうか、全く判らない。
「半数が…」とか「かなりある」とか曖昧な記述に終始しています。

そのあやふやな遺伝子解析を根拠に、縄文人と弥生人の分化を否定していたり、アイヌや琉球人の存在と言った日本に於ける少数民族の存在をまるで無視しています。
極端なのは、中国の民族についての記述。

思い込みの激しい人なんだろうなと思いますが、中国憎しで客観的な記述が全く出来て無い。
なので、この部分も学術書として成立していない訳で。
まるで漢民族という存在を完全に消し去ったかのような記述、尚且つ、中国には多数の少数民族がいるにも関わらず、彼等は全く存在していません。
これは台湾も然りです。

なので、ここで放り投げようと思ったのですが、まぁ読み進めてみようと思いました。

しかし、他の民族についても通り一遍の表層的な記述ばかりで、ちらほらと優生学的な記述やら骨相学みたいな記述が垣間見られます。
逆に言えば、奇書の類。

欧州関係の民族にばかり(しかもそれは表層的なもので、ロマとかバスク人などもほぼ無視)重視した感じの章立てで、その中でもロシアのスラブ人の記述は漢民族同様に悪意に満ちた様な印象を受けました。

そして、南北米大陸、アフリカ、オセアニアはほんのちょっと申し訳程度に触れただけ。
民族全史を謳うのであれば、そもそも発祥のアフリカから説き起こさないといけないんじゃ無いかと思うのは私だけか。

で、巻末に掲載されている参考文献を見て、更に萎える。
大体、参考文献として掲載されているのは新書とか文庫の類です。
一次資料には当たっていません。
こんな代物を学術書コーナーに置くのもどうかと思いますけどね。
最近の書店は売らんかな商売だからねぇ、こんなのでも売れるんでしょう。
特に、日本人の自尊心を擽る商法ですから。

学術書を読み書きしている人にとっては、他山の石とすべき本と言えますし、正直読むだけ無駄です。
まぁ、御陰様で忍耐力だけはつきました。
そこだけは、この本の良かったところかも知れません。

世界「民族」全史 衝突と融合の人類5000年史

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