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日本全国境界未定地の事典 [読書]

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予定では今週末はリハビリに行って、明治座に行くと言うパターンだったのですが、土曜日に日曜日だと思っていたマシン室の掃除をすると言うので立ち会いをせねばならず、更に日曜日にとある環境の移設があると言う事で、出勤しなければならなくなりました。
そして、月末は遠征に出掛けるので、久々に2週間休み無しです。
日曜日が早めに終わってくれれば良いのですが、夜にまでもつれ込むと月曜以降苦しくなります。

さて、ここ最近読んでいた本の紹介。

『日本全国境界未定地の事典』(浅井建爾著/東京堂出版刊)
要は、日本全国にある市区町村及び都道府県境が決まっていない場所を紹介した本です。
都道府県や市区町村の境目が決まっていないなんてそんな事あるのか、と言う人もいるかと思いますが、明治時代に地租を徴収するために全国を測量したのは良いのですが、そのやり方が結構好い加減で、現在の土地登記簿でも未定地がかなりあったりします。

そうした状況で国土地理院が新たに詳細な地形図を作成する際、現在では精度の高い測量技術を用いている為、以前作成した地形図と齟齬が生じるケースが発生し、決まっていた境界線がはっきりしなくなったと言うのも多いのですが、他にも、宗教関係の聖地では、変に境界線を作ると後々齟齬が生じる為に敢えて境界線を設けなかったり、江戸期以前から隣村との間で水利権や入会権で紛争があり、双方が一歩も引かなかったりした土地、測量隊がその土地に行き着けず、結果的に地形図が作れず、現在に至ると言う土地などなど、その発生源は様々です。

境界未定地で一番有名なのは富士山で、その山頂は静岡県にも山梨県にも属していません。
決めると両県に禍根を残すからと言われています。
同様に、北アルプスなど高山が続く様な場所だと、境界が決まっていない場所が散見されます。
こちらは、前人未踏の地で、明治時代、貧素な装備の測量隊がその場所にまで行き着かなかった名残です。

湖沼や河川なんかも境界未定地の宝庫です。
元々、湖沼や河川は動く事が多かったりします。

特に湖沼は入会地という性格が強く、沿岸自治体の共同利用という解決策を採っているケースが多かったのですが、地方交付税交付金がその自治体の面積に従って配布される事になって、俄にそうした共用地を自分の自治体に組み入れたいと言うニーズが高まりました。
例えば、琵琶湖なんかは、沿岸の自治体が話し合って境界を決めた例です。
琵琶湖が各市町村に繰り込まれて支払われる地方交付税は合計2.8億だそうで、それを各市町村は面積で按分しているそうです。
ただ、流石に全額をそれぞれの会計に繰り込むのでは無く、一定額は琵琶湖保全のための積立金として醵出しているとか。
琵琶湖を皮切りに、浜名湖や霞ヶ浦なんかが続々と境界を決めていっています。

河川については、元々の境界が河川の中央を通る事が多いのですが、洪水や河川改修などで流路が変わってしまうと、境界が歪になってしまう事が多く、双方の自治体との間で揉めるケースがあり、結果、寝た子を起こすな、とばかりに放置するケースも多いとか。

こうした自然環境が原因になっているほか、最近でも境界未定地は発生しています。
最近有名になったのは、大田区と江東区の間のゴミ埋め立て地を巡る争い。
大田区に不利な裁定が東京都によって下され、大田区はそれを不服として裁判に訴えています。
この様に、境界未定地は拗れることが多いため、中々解決に至りません。
特に最近の様に、地方交付税交付金や税収が絡むので厄介です。

この本は、日本の北から南まで、そして、日本と海外との間の境界未定地(千島列島、南樺太、竹島、尖閣諸島)も引っくるめた形で図と解説の見開き2ページで紹介しています。

因みに、日本で一番境界未定地が多い自治体は、意外にも私が以前住んでいた兵庫県西宮市で、甲山北麓の深谷貯水池の直ぐ南側に1箇所、樫ヶ峰を挟んで南北2箇所、岩倉山北方に1箇所、宝塚駅北西の武庫川近辺に1箇所、それぞれ宝塚市との未定地があり、有馬温泉の北側と白水峡公園墓地東側に各1箇所神戸市北区との未定地、六甲山東側の芦有ドライブウェイに掛かる部分が芦屋市との未定地と都合8箇所の未定地が存在するそうです。
何れも、地籍調査が行われていないので、境界確定の見通しは立っていないとか。
阪神淡路大震災の時はどうやって処理したんでしょうか。
地元ながら、ちょっと気になりますね。


日本全国 境界未定地の事典

日本全国 境界未定地の事典

  • 作者: 浅井 建爾
  • 出版社/メーカー: 東京堂出版
  • 発売日: 2019/01/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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