ジャム、ゼリー、マーマレードの歴史 [読書]
台風10号はとうとう週末に日本列島を縦断するらしいです。
そんな中、土曜日に私は休日出勤でサーバルームのワックス掛け立ち会いですよ。
晴れていれば、その後羽田にでも行こうと思いましたが、この調子では大荒れの天気なのは目に見えています。
幸い、南北線は浅いところを走る地下鉄と違って雨に強いので、行き帰りはすんなり帰る事が出来ますが、会社までの道のりが、最近、ビルの新築工事で雨除けが撤去された御陰でずぶ濡れになる事請け合いなんですよね。
合羽を着て行くにしても、滅茶苦茶蒸し暑かったらイヤだなあと思ったりする。
せめて、上陸したらとっとと去ってくれませんかねぇ。
まぁ、無理な注文とは思いますが。
さて、ここ最近、通勤の行き帰りに読んでいた本の紹介。
最近は電車の席に座っていてもそのまま頭を垂れる(=眠る)事が多くて、中々本を読む気力が起きません。
なので、かなりペースが落ちています。
今回は『食の図書館 ジャム、ゼリー、マーマレードの歴史』(サラ・B・フッド著/内田千穂子訳:原書房刊)の紹介。
原書房が歴史ジャンルとは言えこんな本を発行するのは珍しいのですが、この食の図書館シリーズは100冊以上も出ているものになります。
結構出版するのも大変だと思うのですが、ネタを集めるのも大変じゃ無いかなぁと思った。
今回の本はカナダの大学教授が書いた本となります。
一応、古代ローマやペルシャで作られたジャムやゼリー、マーマレードから説き起こすのですが、その後は一気に16世紀の欧州に飛びます。
まぁ、この辺はカナダのようなある意味欧州文化圏に位置する人が書いているので仕方無いですね。
ローマやペルシャで作られたのは、果物を蜂蜜やシロップに漬けたものです。
当然、こうしたものはコストが掛かり、余り庶民の口には入りません。
これが劇的に改善するのは植民地支配が確立した16世紀な訳で、ラテンアメリカで作られた低コストの砂糖が欧州に入ってくると、先ず貴族のデザートとして果物の砂糖漬が作られ、それを寒天質で包んだゼリーが作られていきます。
その後、英国が各地に進出してプランテーションで砂糖を作り始めると、その量が劇的に増え、産業革命とも相俟って一気に砂糖の価格も下がり、ジャムやマーマレードと言った果物の砂糖漬が庶民の食卓に上ることになります。
そう言う意味では、植民地の奴隷労働の結果が、宗主国の庶民の食卓を潤すと言う結果になった訳です。
一方で、ジャムやマーマレードと言ったものは、当初は農家の副業で作られました。
自前の果樹園がある農家が、形の悪い生食用の果物を棄てる代わりに、スライスして砂糖に漬けたのが始まりです。
それが段々と評判を呼び、19世紀にはそれが一種のベンチャーとなって、業容を拡大していくと共に、資本家の手に依って大規模工場が作られるようになります。
小規模農家から発展した会社は、全体的に家族的な会社が多かったのですが、資本家が資本を出して大規模な工場を最初から設立する様なところでは、今と同じ様な、否、今よりも酷い奴隷的な労働でこうした製品を作る会社もありました。
19世紀末になると、そうした会社のいくつかで争議が発生し、社会問題になるところも出て来ています。
大体、こうした会社の製品はボイコットされてしまい、行き詰まった会社は別の会社に買収されて、段々、巨大加工食品工業へと変貌を遂げていきますし、家族経営で始まったところも、代替わりの際に経営者一族が株を手放して、その会社のブランドイメージを欲した巨大加工食品工業に売却することも多くなりました。
しかし近年では、SDGsに代表される様に、巨大資本のブランド品よりも、近場の果樹園から新鮮な果樹をジャムやマーマレードなどに加工する小規模事業所が見直されています。
この本は、確かにタイトル通りの部分はあるのですが、寧ろ、こうした製品を作る食品工業に光を当てた感じの本になっています。
でもって、ジャムやマーマレードの記述はあるのですがゼリーはほんの一部しかありません。
そして、最初に書いた様に視点は英語圏視点で描かれているので、大陸のこうした製品の発展には余り焦点が当たっていないように思えました。
多分、そこまで深く突っ込んだら、今のページ数の倍になるので、手軽な価格で出す事が出来ないのかも知れませんけどね。