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売ったお金で弩級艦 [日記]

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ここ数日ドタバタしていてかなり疲れが溜っていて、昨日は何とか会社に行ったけど、今日は力尽きた。
なので、今日はお休みして昼前から寝ていました。
大分復活したので大分マシになりましたが。

と言う事で、昨日の続き。

1906年、世界の海軍強国を驚愕させる出来事が起きます。
Dreadnoughtと呼ばれる英国の戦艦は、今までの戦艦とは異次元の性能で、今までの戦艦を一気に旧式化させたわけです。

この戦艦の衝撃は、弩級艦と言う言葉に表されています。
今までの戦艦は鈍重で、三連製レシプロ機関を動力にしていたのですが、Dreadnoughtは、蒸気タービンと言う高性能機関を動力とし、速度は今までの戦艦が20kts未満だったのが一気に20ktsを超えました。

つまり、高速を発揮して敵の砲撃を避ける事が出来ます。
更に、今までが15,000トン程度の船体に12インチの主砲を艦の前後に最大で4門装備していただけ、その代わりにそれよりも少し小さな副砲を側面に何門かを装備していただけだったのに対し、Dreadnoughtは20,000トン級となり、大きくなった船体には今までよりも多い、10門の12インチ砲を装備すると共に、少し小口径の副砲を持たずに統一的な射撃が出来る様になりました。
駆逐艦などの小型艦艇撃退用には6インチの砲をケースメートに入れて装備する形になります。

今までは片舷指向が12インチ砲4門+10インチ程度の副主砲が2~4門程度だったのに、12インチ砲が片舷指向で8門と倍になり、攻撃力も射撃統制能力も一気に向上した訳で、そうなると、今までの戦艦は一方的に撃たれるだけになります。

と言う事になると、今まで大枚の資金を叩いて建造していた戦艦は一夜にして旧式化してしまいました。
実はそのDreadnoughtを生んだ英国が、一番旧式化した戦艦を保有する数が多く、一番ダメージを被ったのが皮肉なのですが…。

こうした前弩級艦は無用の長物に成り果てたのですが、今となってはそんな艦を購入する国はありません。
今までの戦艦の定義がリセットされたのですから、新規に調達した方が性能は良いものが手に入ります。

従って、前弩級艦を買う国はありませんでした。
しかし、ギリシャでは事情が異なりました。
一応、弩級艦は各国に発注していますが、トルコが前弩級艦とは言え戦艦を保有しているのですから、戦力バランス上、それなりの戦艦は必要です。

そこで、各国の戦艦を漁ったところ、米国が建造した前弩級艦を手に入れる事になります。
米国としても、建造した直後に既に旧式化した戦艦なんか海軍でも運用したく有りませんから、願ったり叶ったりです。

米国は1903年の海軍増強法で大量建造され、一気に旧式化してしまった前弩級艦の内、最後に建造された戦艦でしたが、経済性を考慮してその前に発注されたVermont級戦艦よりも3,000トン小さく13,000トン程度となり、結果としてボイラーが4基減って速度も余り出ず、小型すぎて余り使い勝手が良くなかった最後の前弩級艦、Mississippi級の2隻に白羽の矢を立てました。

竣工が1908年2月1日、売却が1914年7月30日なので米国に在籍していたのは僅か6年となります。
そして米国海軍在籍末期には、戦艦としてでは無く、水上機母艦として、米墨戦争に駆り出されたりしています。
前弩級艦なので、主砲は12インチ砲が4門、副砲として8インチ砲が8門砲塔式に装備され、更にケースメートに7インチ砲8門を装備していました。

それでも前弩級艦のトルコ相手だと十分ですし、後から弩級艦が入手出来るはずなので、ギリシャとしても満足だったのでしょう。
因みに、その売却資金を米国海軍は、超弩級艦のNew Mexico級戦艦の建造費に充当したそうです。

ギリシャは、Mississippi級の2隻、MississippiとIdahoの2隻を、KilkisとLimnosと命名して艦籍に編入しました。
第1次世界大戦には余り活躍せず、1926年に機関が換装されますが、1932年になると旧式化して、Kikkisは艦籍から除かれて砲術学校として余生を送り、Limnosも予備役に編入され、武装が陸揚されてエーゲ海の島々に設けられた要塞に装備されています。

第2次世界大戦が勃発し、ギリシャが連合国側に立って参戦すると、サラミスに回航されて、浮き砲台として両艦とも利用されますが、1941年4月23日、KikkisとLimnosは共にJu87の急降下爆撃で撃沈され、Kilkisは何とか座礁して完全に沈没を免れますが、1952年に浮揚されスクラップとなりました。
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