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モスクワ攻防1941 [読書]

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今日は終日引き籠り。
意外にもしっかり寝た為か、筋肉痛が全然無かった。
何時もは腕が上がらないほどになるのですが…とよく考えてみたら、ukkaは専門のペンライトが無くて、第2ブロックくらいまでペンライトを出さなかったため、終始腕を挙げていた訳では無いことに気が付いた。
ペンライトを振っていると普段使っていない腕の筋肉を使う事になるからでしょうか。

で、久々に6月分の写真を少しだけ整理することが出来ました。
後は、YouTubeを見て過ごす。

今日はここ最近、トイレで読んでいた本について。
今回は、本の山が崩れたときに掘り出された積み本で、『モスクワ攻防1941 戦時下の都市と住民』(Sir Rodric Q. Breithwaite著/川上洸訳/白水社刊)。

この本は13年前の2008年に出版されたものです。
作者は英国人で元ソ連大使、但し、出自は英国軍情報部員で、1950~52年に掛けてウィーンと言う当時東西冷戦の最前線で勤務したりした人。
その後も、各地の外交施設に勤務し、ソ連の英国大使館で一等書記官を経てソ連崩壊直前のソ連大使として活動していました。

こうした経歴を頭に入れておけば、この本がとても読みやすくなります。
で、この本は1941年の初夏から冬にかけて、ドイツが始めたソ連との戦闘をソ連側の視点で描いています。
とは言え、軍事的な視座からこの戦いを見ているのでは無く、どちらかと言えば様々な階層に属する人の日記や書類、回想録やオーラルヒストリーなどを通じて、その時、ソ連の、特に首都モスクワに住んでいた人達が何を思い、どんなことがあったのか、そうしたものを時間軸に載せて再構築したものです。

大体「歴史は勝者が作る」という言葉がある様に、公的な歴史は、その時に権力を維持している人間達に都合良く作られる傾向があります。
御多分に漏れず、1941年のモスクワではスターリンが指導力を発揮し、適材適所に手足となる軍人達を配置して、延びきったドイツ軍の前線に対して効果的な攻撃を仕掛け、結果としてベルリンへの道を創り上げたと言うことになっています。

しかし、種々の記録を再構築してみると、今にも手に届かんばかりのドイツ軍の攻勢にスターリンは狼狽し、自信喪失してダーチャに引き籠り続けて首尾一貫しない命令を下し、民衆は負け続けていた政府を相手にせず、生活を自衛しなければならないため、勝手に活動をしていましたし、軍は後退に後退を続ける前線の状況が把握できず、戦力を無様に磨りつぶしていきました。
その後退の遠因はスターリンの命令にもあった訳ですが…。

ロシアにとって幸いだったのは、軍が敗退し続けた御陰で第一線兵力が大量にドイツに投降し、ドイツ軍の兵力がその捕虜対応に充当されたことで、前線に充当できる兵力が少なくなってモスクワ前面で息切れしたこと、また中々思う様に行かないモスクワ攻撃に業を煮やしたヒトラーが、カフカス方面に軍を割いた事です。

冬将軍の到来がドイツ軍の足を止めたと言うのが定説でしたが、ソ連軍もそれに劣らず酷い目に遭っていますし、空襲についても、ロンドンほどは酷くなかったのですが、それでも少なからぬ被害が出ています。

秩序を取り戻すために、軍の予備兵力をモスクワに投入すると共に、秘密警察の部隊を投入して不穏分子を一掃し、数多の人間が収容所に送られたり疎開先に送られていきました。
その疎開先では、家すら用意されず、艱難辛苦を共にする人々が山の様にいました。

動ける男達は徴兵され、民兵として鉄砲の的になりに前線に投入されて犬死にしてしまったり、逃亡したとかそう見做された行動を取った場合は、処刑か懲罰部隊送りにされました。
男達がいなくなった職場には女性が投入されると共に、女性でも看護兵として、特異な場合は飛行士とか狙撃兵として前線に投入されたりしています。
こうした女性兵士でも、職場結婚した者もいれば、将軍の愛人になったりした者もいます。

この本は丁度ソ連が崩壊して、ロシアへ移行した混乱時に取材が行われました。
当時はまだこの時代を生き延びている人達もいましたし、国家の記録もある程度秘密が解除されていて、資料を探すのにも好都合な時代でした。

なので、かなり生々しい歴史がこの本では描写されています。
今はプーチン独裁体制なので、こうした祖国の黒歴史的な出来事が表に出る事は少ないのでは無いでしょうか。

13年前の古い本ですが、民衆史と言う視点から見ると良書だと思いますね。
併せて、『赤軍記者グロースマン』も読めばより深みが出ると思います…ってこれも古い本ですけどね。

モスクワ攻防1941―戦時下の都市と住民

モスクワ攻防1941―戦時下の都市と住民

  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2021/09/05
  • メディア: 単行本



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