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プライドが邪魔したか [日記]

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今日は午前中から終日会議。
御陰で、課題を考える暇が無く、色々と聞かれたわけですが、そもそも、その課題はユーザには何等メリットが無く、サービスを運用する部隊だけが得をするというもの。
それを話しようとしたのですが、完全にスルーされて来たのがやっと話が噛み合いました。
まぁ、かなりの回り道ですが正常な軌道に戻ったのは幸いです。
と言うか、この時点でドサ回り確定なのですけどね。

まぁ、こんな感じで一般の会社生活でも、プライドが邪魔して先に進めないのは良くある話です。
三菱のSpace Jetが昨日、6度目の就航延期を発表しました。
元々の設計思想はかなりのアドバンテージを持って開発に着手したはずなのに、後発の企業に次々に追い抜かれ、遂にはその後塵を拝することになってしまいました。
2021年の就航も駄目で、2023年になります。

既にそのクラスの機体として、AirbusはBombardierのCSを買収して、A.220として各航空会社に売り込みを掛けていますし、BoeingもEmbraerを会社ごと買収して子会社化し、E-Jet、E2-jetを手中にしています。
まぁ、BoeingはB.737-MAXの問題次第でどう転ぶかは分かりませんが。

欧米の2大旅客機会社がそれぞれ手駒を持ってしまったので、今更、Space Jetがこれらの中に入り込む余地はありません。
ロシアに目を向けても、自国でSukhoi Superjetを開発して、欧米にも売り込みを掛けていますし、中国もCOMAC ARJ21を開発して自国の航空会社に採用されていますから、これまた市場規模が大きくとも参入の余地がありません。

そう言う意味では、Space Jetの先行きは非常に暗いものがあります。
何でこうなったか、と言えば、結局は三菱という企業の体質にあるのかな、と。
三菱は型式証明と言うものの取得にかなり高を括っていたのでは無いでしょうか。
自社はBoeingのB.787の一部を生産しているし、その品質はBoeingでも高く評価されているから、米国FAAの型式証明は難なく取れるであろうと言う期待があったのでしょう。
実際には、FAAの型式証明と言うのは非関税障壁と言って良いくらいハードルが高いものだったようです。
もっとも、FAAの型式証明さえ取れれば、他地域の型式証明はほぼ自動的に取ることが出来ます。
ただ、それをスムースに取ろうと思えば、それ相応の対応が必要になります。

ロシアのSuperjetが米国で売れなかったり、中国のCRJ21が国内以外で全く売れないのは、型式証明が取れないと言うのが最大の問題です。
まぁ、ロシアの方は政策的な問題もあるのでしょうが(実際にメキシコには売れていますし)。

ホンダジェットの本を読んでいたら、この会社もやっぱり型式証明を取るのに苦労したという記述がありました。
勿論、専門家の助言は得ていますし、その経験のある技術者を外部から招聘しています。
ただ、こちらは素人に近い集団です。
なので、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥とばかりに、FAAの技官の懐に飛び込んで、兎に角判らない所は聞きまくった様です。
人間、真剣に質問を投げかける人には好感を持ちますし、頼りにされて悪い気にはなりません。
ホンダジェットの型式証明に対して、彼等技官の方も支援を惜しまないところもありました。

片やSpace Jetの方は、完全に井の中の蛙だったのでは無いでしょうか。
B.787などの開発過程で、Boeingの技術者がいとも簡単に型式証明を取っているのを間近でみていたので、俺たちも簡単に取れるだろうし、それに素人では無いと云う奢りが有ったのでは…。
そして、FAAの技官とも余りコミュニケーションを取らなかったのでは無いか。
その結果、実際にその型式証明を取得する段になって、考えていた事と実際の流れが完全にアンマッチになってしまったのが今の状態になったのでは無いかな、と思います。

ホンダジェットの本の中に、FAAの技官だったか風洞を借りに行ったBoeingの技術者だったかが語ったところでは、日本人の航空技術者は、パーツの設計書を書いただけで、自分がさもその飛行機を開発したのだと勘違いしてしまう、と言うのがありました。
全体を俯瞰して、それを頭の中に叩き込み、技官の質問にはさっと引出しを開けて的確に答えないと、彼等の要求を満たしたことにならない、日本の航空技術者にはこの視点が欠けている、と。

何でも、自分達でやるのは大事なことではありますが、未知の領域に踏み込む際には、パートナーをきちんと決めておかないと先に進めない、或いは手戻りが山の様に起きると言うことになるのでは無いでしょうか。

まぁ、三菱は過去にMU-300で痛い目を見ていますから、その轍は踏みたくないと言うのが潜在的にあったのかも知れませんが。
これは企業文化の問題であって、小手先の改革では上手く行かないのでは無いでしょうか。
冗談抜きで、今度も折角の開発を投げ出して、米国のどこかの企業か漁夫の利を取ると言う事が有るかも知れませんね。

それにしても、三菱は、自動車で転け、船で転け、今回は飛行機と陸海空全てを制覇したことになります。
草葉の陰で、渋沢栄一が泣いているのでは無いでしょうかね。
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